それでも、テスラの1月30日の決算説明会では、イーロン・マスクが「現実歪曲フィールド」を全開にして、自動運転タクシーやヒューマノイドロボット、さらにはまだ実証されていない人工知能(AI)の実力について語ったことで株価を上昇させた。
テスラの株価は、決算発表の当日に3%上昇し、翌日もさらに1%上昇した。投資家は、同社の四半期の純利益の23億ドル(約3580億円)の半分以上が、ビットコインの価格の上昇による6億ドル(約930億円)のリターンと、他社へのカーボンクレジット販売による6億9200万ドル(約1080億円)の収益によるものであることを気に留めなかった(前者は極めてボラティリティが高く、後者はトランプ大統領が、排気ガス規制を撤回すれば急減する可能性が高い)。また、最も注目される自動車販売の粗利益率が引き続き低下している点も気にしなかった。
JPモルガンのライアン・ブリンクマンは、「この株価の動きは、会社の業績や成長見通しとまったく関係がない」と指摘し、「テスラは、完全にファンダメンタルズから乖離してしまった」と述べた。
つまり、ミーム株としてのテスラは絶好調だ。しかし、それはいつまで続くのか?
マスクによる「ワンマン経営」の限界
現在のところ、テスラのメイン事業はクルマとバッテリーの製造やEV充電サービスの提供であり、収益の90%以上はそこから生まれている。そして、この成長を維持するには、フルタイムのCEOが必要だ。同社に必要なのは、トランプ政権での役割と並行しながらスペースXやX(旧ツイッター)、xAI(エックスエーアイ)、ボーリング・カンパニー、ニューラリンクを率いるような人物ではない。「それでもテスラは変わらない」とロサンゼルスの資産運用会社ガーバー・カワサキのロス・ガーバーCEOは述べている。彼は、長年のマスクファンで、自社で1億ドル(約156億円)のテスラ株を運用しているが、マスクがツイッターを買収して以来、考えを改めたという。
ガーバーは、昨年6月にテスラの取締役の座を得ようしようとしたが、十分な票を得ることができなかった。もっとも、それが実現したとしても大勢に影響はなかっただろう。マスクがテスラ株の13%を保有し、取締役会を強固に支配している限り、経営陣の交代があっても見かけだけのものに過ぎない。
「テスラは、名目上は上場企業だが、実際はマスクの私企業だ」とガーバーは語った。