マスクは、今回の決算で予想通り、2025年の販売目標について具体的な数値を示さず、「年内にモデルYの改良版と低価格車が登場することで販売台数は増える」と述べるにとどめた。この状況が、マスクがテスラの未来を「自動運転タクシー」に賭ける理由を説明しているが、この話もまた、過去の誇大宣伝の延長線上にある。
ロボタクシーにも暗雲
マスクによれば、すべてが順調に進めば2026年に完全自動運転によるロボタクシーの「サイバーキャブ」を投入できるという。しかし、それは現実的ではない。なぜなら、テスラの「フル・セルフ・ドライビング」機能は、依然として人間のドライバーの監視が必要であり、これまでに少なくとも13件の事故を引き起こし、複数の政府の調査が進行中だからだ。さらに、テスラの自動運転システムはカメラのみを使用するもので、この分野で先行するWaymo(ウェイモ)のような業界リーダーが採用するレーザーやLiDAR技術を用いていない点で疑問を持たれている。「人間は、目からレーザーを照射してクルマを運転するわけではない。人間は目と脳だけで運転する。そのデジタル版は、カメラとAIだ」とマスクは先日述べていた。これは、一見するとうまい言い回しかもしれないが、専門家は異議を唱えている。
「その理論には2つの問題がある」と、カーネギーメロン大学で自動運転車を研究するフィル・クープマン准教授は指摘する。「1つは、人間の目は非常に優れているが、テスラのカメラは夜間の性能がひどく、暗闇での障害物の検知に失敗することが多い点だ」と彼は述べた。
さらにもう1つの問題として、人間は未知の運転状況に適応できるが、テスラのソフトウェアはそれが苦手だという。「機械学習は常識に到達する前に限界に達する。機械学習は常識を持つことができない。あるのは誤った自信だけだ」とクープマン准教授は語っている。
(forbes.com原文)