この展覧会は、高い評価を得てきた深澤が2024年、同美術館の現代・近代デザイン・コレクションを支えるチーム、「Collab」がデザインの分野に多大な影響を与えた人々に贈る「Collab Design Excellence Awards(デザイン・エクセレンス賞)」を受賞したことに伴い、開催されているものだ。
同賞の過去の受賞者には、建築家のザハ・ハディド(故人)、フランク・ゲーリー、ディーター・ラムスなどがいる。
深澤について、フィラデルフィア美術館の欧州装飾美術・彫刻部門のアシスタント・キュレーター、コリン・ファニングは、その存在や作品、デザイン分野に与えてきた影響は専門家たちの間では広く知られているものの、米国ではより幅広い意味において、「相応の認知度が得られていなかった」デザイナーだと説明している。



「多作」なデザイナー
日本人として初めてデザイン・エクセレンス賞を受賞した深澤は、現在68歳。1980年にセイコーエプソンに入社し、テレビウォッチなどマイクロテクノロジーを取り入れた斬新な製品を手掛けた。その後は米サンフランシスコにあるデザインコンサルタント会社、ID Two(現在のIDEO)に在籍し、Appleのコンセプト開発に携わった。そして、2003年には東京に、自らの名を冠した会社を設立している。深澤は、非常に多作なデザイナーだ。前出のブランドのほか、ハーマン・ミラーやアレッシィ、ボッフィなど、70以上の国際的なブランドと提携してきた。当然ながら、フィラデルフィア美術館の館内でこの展覧会のために割り当てられた特別に広いとは言えないスペースで、それらのすべてを展示することはできない。
だが、その展示スペースは考え抜かれた、非常に使いやすい、誰もが欲しくなるような数々のもので埋め尽くされている。