「良い睡眠の知識だけを得ても、『体に良い食事』という知識だけで健康にならないのと同じです」というのは、今回、スーパーホテルの支配人たちの睡眠改善プログラムを4週間行った角谷リョウである。

快眠コーチとして『超熟睡トレーニング』や『睡眠戦略』などの著書がある角谷が強調するのは、「体験による睡眠衛生」という概念である。誰しも経験があるだろうが、本で読んだ知識や学校の授業で習った教科書の内容は、月日が経つと忘れがちである。しかし、その知識も、実際に体験をして、それを報告するなど言語化していくプロセスを合わせると、脳に刻み込まれて、体験と知識は熟成されていく。
角谷が行った5つのプログラムを紹介しよう。
1 業界特性に合わせたカスタマイズされたアドバイス
業務によってそれぞれ事情があるため、その業界に合わせた方法を取るのがよい。例えば、今回、改善プログラムに参加したスーパーホテルpremier秋葉原の木村賢治支配人は、「イラストを描くのが好きで、お客様向けのアンケートに手書きのイラストを描いているうちに寝るのを忘れた」といった、一見ほのぼのした言い訳だが、体に悪い状態にあった。ホテルなどのサービス業の残業時間は、あらゆる産業のなかでワーストワンである。お客さんの都合で起こされることはザラだ。そこで角谷が薦めたのが「分割睡眠」である。
「睡眠をとるいろんなグッズが売られており、10分間とか15分間のチャージ睡眠をしたほうがいいです。たとえば、使い捨てのホットアイマスクなどです。分割睡眠の最終目的は、『回復』なので、回復のために自分にあったものをカスタマイズした方がいいです」
分割睡眠という手法は意外だが、古くは「ラスコーの壁画」が夜中に書かれていたという説があるように、夜になると頭が冴えて、活動がはかどるということもある。何がなんでも早寝早起きをしなければならないと決める方がストレスになることもあるのだ。