「ほしい商品を検索すれば在庫がわかる」アマゾンの便利さに対抗し、Walmartは全米約5000店舗の在庫の有無を開示している。
在庫はGoogleおよび自社Webサイト上に表示され、店舗からの配送や店舗での受け取りなどのサービスを提供している。
Googleでは特定の商品が検索されるとオンライン専用の在庫ではなく、近くの店舗の在庫の有無を広告として表示するローカル在庫広告(Local Inventory Ads)サービスを提供しているように、海外では店舗在庫のオンライン開示が盛んなことが分かる。
店舗の在庫をオンラインで開示して、顧客を店舗に誘導したり、店舗の在庫を実店舗とECの両方で有効活用したりすることは、欧米だけの先進的な事例ではなく、国内でも一般化しつつある。今回は日本の小売業のオンラインでの店舗在庫の開示状況を調査した。
ホームセンターがすごい
調査対象はアパレル、ホームセンター、家電量販店、ドラッグストアそれぞれの業界の売上上位5社で、店舗在庫のオンラインでの開示状況を調査した。
図1の通り、店舗ごとの在庫の有無(例. 有り◯、無し✕)をオンラインで開示している企業は、いずれの業界も3~4社と、珍しくないサービスになっていることがわかる。
さらに、店舗ごとの在庫の数量(例. 「4点」)をオンラインで開示している企業数を調べると、家電量販店で1社のみ、ドラッグストアやアパレルではどこも開示していない一方で、ホームセンターは5社中4社が開示していた。
一般的に、店舗に在庫があることを単純に「◯」で示すよりも、在庫数を「4点」と具体的に示すほうが、顧客に対し誤った情報を開示をするリスクが高い。そのため後者のサービスは小売業界で普及しにくかったのだが、なぜホームセンター業界では在庫点数を開示することが広まったのか。
図1 - 各業界の売上高上位5社のオンラインでの店舗在庫の開示状況 (25年1月時点)
なぜホームセンターで在庫点数の開示が進んでいるのか?
某ホームセンターの関係者にこの理由を聞いてみると、「Home Depotを参考にした」と答えが返ってきた。
冒頭で海外では店舗在庫のオンライン開示が盛んだと記したが、ホームセンターの世界最大手、米Home Depotは、店舗在庫開示の先駆者としても知られている。 ホームセンターには、プロの施工業者が現場に入る前に資材を調達するニーズがあり、それらのニーズに的確に応えようとするには、在庫が「ある」「ない」だけではなく、「どこの店舗に」「何個あるのか」という情報を提供する必要があるからだ。
日本でも早朝から営業しているホームセンターは多く、その日に必ず仕事を終わらせなければならないプロが、限られた朝の時間で資材を間違いなく調達しようとするニーズに応えようとした結果、各社の在庫数開示が進んできたのではないだろうか。