その具体例が、DeepSeek(ディープシーク)と呼ばれる中国企業が開発したAIモデルの「R1」が、OpenAIの「o1」の競合に浮上したことだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、DeepSeek は、より少ない数の性能の劣るチップを使用することで、米国の競合よりもはるかに低コストで迅速な開発を行ったという。
効果的なAIモデルを低コストで実現したR1の成功は、企業に恩恵をもたらすだろう。しかも、安価なモデルの方が改良のスピードが速い可能性が高い。
生成AIを使用して財務リターンを予測するシリコンバレー企業を共同創業したアンソニー・プーは、「OpenAIのモデルは性能が最高だが、必要のない機能にお金を払いたくない」とWSJに語った。彼の会社は昨年9月、使用するモデルをAnthropic(アンソロピック)のClaude(クロード)からDeepSeekのものに切り替えたという。その結果、DeepSeekは「ほぼ同じ性能を、約4分の1のコストで提供した」とプーは述べている。
DeepSeekの成功は、米国を拠点とする大規模言語モデル(LLM)の開発者たちの新たなライバルを生む可能性がある。中国のスタートアップがより少ないチップで強力なAIモデルを構築するようになれば、エヌビディアの成長率は鈍化する可能性がある。開発者がDeepSeekの戦略を模倣して、より少ない数の性能の劣るAIチップを利用するようになるからだ。
エヌビディアの広報担当者は、この記事へのコメントを拒否した。
著名投資家が絶賛する性能
DeepSeekはシリコンバレーの有力投資家を驚嘆させている。「DeepSeek R1は、これまで目にした中で最も驚異的で印象的なブレークスルーの1つだ」と、マーク・アンドリーセンは1月24日にX(旧ツイッター)に投稿した。公平を期すために言えば、DeepSeekの技術はOpenAIやグーグルなどの米国のライバルには劣る。しかし、1月20日に発表された同社のR1モデルは「米国の開発者が不可欠と考えたプロセスを一部省略しながら、チップの数を抑え、かつ性能の劣るチップを使用して、競合に匹敵するものに仕上げている」と、WSJは指摘した。
さらに、R1はオープンソースで提供されるため、企業は、OpenAIやグーグルのモデルよりも大幅に低いコストで利用できるとされている。ニュースサイトのVentureBeatによれば、R1はAIプラットフォームのHuggingFace(ハギングフェイス)で約10万9000回ダウンロードされ、トレンドの1位に浮上しており、OpenAIのo1に匹敵する性能を、20分の1以下のコストで提供しているという。