今回の山火事で、一部メディアは消火用水の枯渇を州知事らの失策として非難している。しかし今は政敵叩きで満足している場合ではない。知っておかなければならないのは、この街のインフラが「通常」の気候に耐えうるように建設されたものであることだ。そして、その「通常」は気候変動によって二度と戻らなくなってしまった。
ロサンゼルスの主要インフラは20世紀半ば、当時の災害・気象予測を基準に建設された。なお、ロサンゼルス水道電力局の元主任技師はニューヨーク・タイムズ紙に、丘陵地帯の貯水システムは数百軒の火災ではなく、数軒の消火用に設計されたものだと説明している。気候変動がここまで進んだ今、もはや過去の設計基準に頼ることはできない。今回の山火事は現実への適応を私たちに迫る、激しい警鐘である。
ロサンゼルスに限らず、今、気候変動による大規模災害は世界各地で起きている。こうした災害はまた、地域の税収、食品価格、金利、電力供給などに影響を与え、社会に不安定さをもたらす。
気候変動の影響は多分野にわたる
ブルームバーグは昨年、深刻化する気象災害により、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の救済基金が枯渇する恐れがあると報じた。私は数年前、「Climate Change Will Eat Your Bond Portfolio(気候変動が債券ポートフォリオに与える打撃)」という記事の中で、被災後に住民がその土地を離れることによる地域経済への打撃を指摘している。人口が減れば税収が減り、被災地の再建が難しくなり、地方債増加のリスクも高まる。気候変動の影響は多分野にわたる。フィナンシャル・タイムズ紙は、気候変動の影響で農作物の収穫量が減り、食品価格が世界的に上昇していると報じている。各国の中央銀行は通常、政策金利を決定する際、価格変動の大きい食品やエネルギーを除外する傾向があるが、今後は気候変動の影響を金利モデルに組み込む必要があるかもしれない。