北米

2025.01.24 12:30

米ロスの山火事が止まらない──気候変動のカオスにどう備えるか

大惨事となったパシフィック・パリセーズ地区の鎮火を待たずして、1月22日午前、ヒューズ地区で新たな山火事が発生。今も懸命の消火活動が続く(Getty Images)

大惨事となったパシフィック・パリセーズ地区の鎮火を待たずして、1月22日午前、ヒューズ地区で新たな山火事が発生。今も懸命の消火活動が続く(Getty Images)

2500億ドル(約39兆円)──これは気象予測会社AccuWeather(アキュウェザー)が推計した、ロサンゼルスで今も猛威を振るっている山火事の被害額だ。この推計が正確であれば、昨年のハリケーン「ヘリーン」、さらには2020年に全米各地で相次いだ大規模な山火事の総被害額をも上回ることになる。

今回の山火事で、一部メディアは消火用水の枯渇を州知事らの失策として非難している。しかし今は政敵叩きで満足している場合ではない。知っておかなければならないのは、この街のインフラが「通常」の気候に耐えうるように建設されたものであることだ。そして、その「通常」は気候変動によって二度と戻らなくなってしまった。

ロサンゼルスの主要インフラは20世紀半ば、当時の災害・気象予測を基準に建設された。なお、ロサンゼルス水道電力局の元主任技師はニューヨーク・タイムズ紙に、丘陵地帯の貯水システムは数百軒の火災ではなく、数軒の消火用に設計されたものだと説明している。気候変動がここまで進んだ今、もはや過去の設計基準に頼ることはできない。今回の山火事は現実への適応を私たちに迫る、激しい警鐘である。

ロサンゼルスに限らず、今、気候変動による大規模災害は世界各地で起きている。こうした災害はまた、地域の税収、食品価格、金利、電力供給などに影響を与え、社会に不安定さをもたらす。

気候変動の影響は多分野にわたる

ブルームバーグは昨年、深刻化する気象災害により、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の救済基金が枯渇する恐れがあると報じた。私は数年前、「Climate Change Will Eat Your Bond Portfolio(気候変動が債券ポートフォリオに与える打撃)」という記事の中で、被災後に住民がその土地を離れることによる地域経済への打撃を指摘している。人口が減れば税収が減り、被災地の再建が難しくなり、地方債増加のリスクも高まる。

米海洋大気庁(NOAA)に掲載されたこのグラフは興味深い。注目すべきは、アメリカで災害被害額が最も大きかった上位6年のうち4年が過去10年間に集中し、6年すべてが2000年以降である点だ。ロサンゼルスの山火事におけるアキュウェザーの推計が正しければ、2025年は11カ月を残してすでに、「被害額が最も高い年」の3位となる(NOAA)米海洋大気庁(NOAA)に掲載されたこのグラフ「1980-2024年 米国における大規模災害被害額」は興味深い。注目すべきは、米国で災害被害額が最も大きかった上位6年のうち4年が過去10年間に集中し、6年すべてが2000年以降である点だ。ロサンゼルスの山火事におけるアキュウェザーの推計が正しければ、2025年は11カ月を残してすでに、「被害額が最も高い年」の3位となる(NOAA)

気候変動の影響は多分野にわたる。フィナンシャル・タイムズ紙は、気候変動の影響で農作物の収穫量が減り、食品価格が世界的に上昇していると報じている。各国の中央銀行は通常、政策金利を決定する際、価格変動の大きい食品やエネルギーを除外する傾向があるが、今後は気候変動の影響を金利モデルに組み込む必要があるかもしれない。
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翻訳=猪股るー

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