禁止に否定的な考えを持つ人々に言わせれば、食品で使用される程度の量を口にした場合の健康リスクのデータは、企業に変更を強いるほど強力な証拠にはならないという。それでも疑問は残る。子どもたちの健康とウェルビーイングを考慮するならば、そうしたリスクを取る必要はないはずだ。
食料品店に並ぶ食品から赤色3号を排除すれば、パプリカ色素や赤ビーツ色素といった天然着色料について、生産と投資が促される可能性もある。そうなれば食品メーカーは、製品の改良と健康の増進を推進せざるを得なくなるだろう。合成着色料の代わりになる天然色素は、健康に与えるリスクが低いだけでなく、栄養面でもメリットがある。例えば、よく知られているように、
パプリカには抗酸化物質が含まれ、抗炎症作用がある。
合成着色料を禁止することで、食の重要性や、食と健康の関連についての意識も向上するはずだ。そうなれば、合成食品と考え得る健康リスクについて、消費者が以前より関心をもつようになり、食品のラベルや材料をより注意深く確認した上で購入しようと思うかもしれない。結果的に、自らの体に取り込むものについての自覚や意識が高くなる。こうした姿勢は、肥満や糖尿病の防止に不可欠だ。そのような慢性疾患は、米国だけでなく世界的に増加傾向にある。
赤色3号の使用が禁止されることは、消費者向けマーケティングよりも公衆衛生が優先されることを意味する。赤色3号は、鮮やかな赤色をしており、コストが比較的安いことで知られている。その使用を止めて別のもので代用すれば、子どもたちの健康とウェルビーイングを守ることができるのだ。そればかりか、米国の食品供給について安全性と透明性を向上させることも可能になる。
米次期大統領ドナルド・トランプが保健福祉省トップに指名したロバート・ケネディ・ジュニアは、より慎重な食品検査と、有害性が考えられる多くの物質について安全性評価を実施すべきだという考えの持ち主だ。FDAが赤色3号の使用を禁止したことは、今後4年間の米国の動きを予兆する前ぶれとなると同時に、予防をより重視して食品の安全性に取り組んでいくアプローチへの転換を示唆するものになるだろう。
突き詰めれば、赤色3号の禁止によって、目先の損得を考えたマーケティングよりも、長期的な視点で公衆衛生に力を入れる方向へと、大きな一歩を踏み出すことになる。
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forbes.com 原文)