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2025.01.05 13:00

世界3位のUSJ社長が語る「三方良し経営」

J.L.ボニエ|USJ 代表取締役社長CEO

もともとボニエは財務畑からUSJのCEOに就任した異色の経歴をもつ。オランダ出身のボニエは、大学卒業後に土木工学を学び、社会に出た。その後、兵役を経て、エラスムス大学ロッテルダム経営大学院でMBAを取得。多国籍企業のゼネラル・エレクトリックでは8年のうちに、アメリカやフランス、ドイツ、オランダ、インドなどで勤務した。「国際的な経験を得たいという思いがあり、外国勤務を求めていた」と、ボニエは言う。
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その後は、米ニューヨークでNBCユニバーサルに入社してテーマパーク事業でCFOとして活躍した。そこから、同社が経営権を獲得したUSJのCEOに指名された。自身も「10年前には想像すらしなかった」人事だった。

もっとも、マネジメントというポジションには以前から興味があったという。その理由は、21歳の時に経験した家族の悲劇だった。「両親が相次いで他界しました。私は5人兄弟の長男で末っ子は12歳だった。大学を休んで1年間で家族の面倒を見て、生活を立て直すことができた。その体験が後のキャリアパスをかたちづくったと言えます」。21歳で家族の暮らしを支え、「忍耐強さ」を培ったことが自信になった。

世界をわたり歩いてきたボニエに、日本の企業文化の印象を聞いてみると、「日本のビジネスのやり方は非常に綿密で、会議が多い。これは合意形成のプロセスであり、アメリカのようなトップダウンではなく、ビジョンや使命、価値観をしっかりと組み立てる作業だと理解しています。そこから計画を実行する段になると、非常に効率的に行動しますね」と語る。いろいろな国でビジネスを経験してきたボニエは「日本のスタイルでは忍耐が必要だと思いますが、すぐに順応できました」と言う。
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さらにビジネスパーソンとして、「変化に対して常にオープンであることが必要ですね。また、日本に来て学んだのは、江戸時代からある『三方良し』という言葉です」と教えてくれた。

「三方良し」とは、「売り手」と「買い手」が満足し、そのうえで「社会貢献」をできるのが良い商売であるという考え方だ。これはCSR(企業の社会的責任)にも通じる。

ボニエが繰り返し言及したUSJが社会でコミュニティとして貢献していることも三方良しだろう。USJが成功している重要な要素のひとつになっているということだ。


J.L.ボニエ◎1963年、オランダ生まれ。エラスムス大学ロッテルダム経営大学院でMBAを取得。GEでファイナンス部門に従事。その後、コムキャストグループの傘下であるNBCユニバーサルのテーマパーク部門で財務戦略を担当。2015年より現職。

文=山田敏弘 写真=苅部太郎

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