米国北西部、オレゴン特有の雲が広がるなか、マイク・カイザー(79)は、自らが経営するバンドン・デューンズ・ゴルフリゾートの、間もなくオープン予定の新しい19ホールのパー3コースを歩きながら、これぞ世界一のコースだと宣言してもいいくらいの気分だった。一方で、このコースの特に4番ホールには、もう少し改善の余地があったかもしれないとも思っている。
「傾いているように見えるのです」
そうカイザーは言う。しかし、ただちに手を入れる必要があるわけではないとも思えるため、ひと夏かけて考えることにしたという。
「冬の間に大きく変える可能性もあります。あるいは、そのままにするかもしれませんが」
カイザーが25年前に建設したバンドン・デューンズは、改良を重ね、最終的には拡張したことで、今や高級ゴルフリゾートとして名高い。一帯の土地を購入した1991年当時には、カイザー本人でさえ、週末にゴルフを楽しむような人たちが、寒くて雨が多いこの辺ぴな場所までやってきてくれるだろうかと心配していた。なにしろ、サンフランシスコからは車で9時間、オレゴン州内からであっても、ポートランドからは4時間、ユージーンからでも2時間半はかかるからだ。
しかし、オーシャンビュー、緩やかに連なる砂丘、広めのグリーン、立木の少なさなど、カイザーが愛する伝統的ないわゆるリンクスの特徴を備えたバンドン・デューンズは毎年、実に多くのゴルファーを魅了してきた。そして、カイザーは常にバンドン・デューンズのさらなる成長を考えている。2023年には、年間25万7000ラウンドという驚異的な記録を打ち立てたが、その人気に一役買っているのが、最高級のおもてなしと数千万ドルもの売り上げを誇るグッズの販売だ。
フォーブスの試算によると、バンドン・デューンズの昨年の収益は1億2500万ドル弱で、利益は3100万ドルを超え、このリゾートの評価額は3億5000万ドルに上った。需要は衰えておらず、予約は現在18カ月待ちとなっていて、その理由も明らかだ。リゾートのコースのうち、チャンピオンコース4つが、ゴルフ・ダイジェスト誌の選ぶ全米BEST100コースにランクインしているためであり、にもかかわらずコースでのプレー料金が350ドルで、かの有名なペブルビーチ・ゴルフリンクスの675ドルのおよそ半額だからだ。
カイザーは、愛するこのゴルフリゾートの建設開始以来、約1億ドルを注ぎ込んできたが、将来的にはさらに拡張したいと考えている。間もなくオープンするパー3の新コース(カイザーが「ただ歩いてクラブハウスに戻るよりもプレイしながら戻りたい」と考えた結果、普通は18ホールのところ、追加の19番ホールが設けられた)は 、バンドン・デューンズ・ゴルフリゾートの7つ目のコースとなる。カイザーは8つ目のコースも計画しており、ゆくゆくは少なくとも10のコースをつくりたいと考えている。
ゴルフ場の建設は、土地利用に関する複雑な法律があるうえ、環境面への配慮も求められるなど、時間のかかる取り組みだ。カイザーは今後の計画における最大の障害は自身の年齢だとはばかることなく認める。
「今のままでも満足していますが、生きている限り拡張を続けていきますよ。ペースは落ちるでしょうけれどね」(カイザー)