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経営・戦略

2025.01.24 23:03

東京海上 生田目雅史が目指すビヨンドインシュアランス:CIO AWARD

生田目雅史|東京海上ホールディングス 専務執行役員グループデジタル戦略統括(CDO)

生田目雅史|東京海上ホールディングス 専務執行役員グループデジタル戦略統括(CDO)

2025年1月24日発売の「Forbes JAPAN3月号」では、今年で4回目を迎える〈CIO AWARD2024-25〉を実施。政治的、経済的リスクがつきまとう現在、企業の成長とレジリエンスを構築するテクノロジーリーダーを選出した。

DXは進んでいるのか? その取り組みは革新的なのか?─── デジタル時代の発想とリーダーシップを再定義した、特筆すべき回答が揃う。

膨大なデータを惜しみなく活用し、積極的にネットワークを広げる。多くの賛同者とともにつくり上げる新しい世界が生田目には見えている。



「CDOの使命はCEOの一歩前を歩き探索し、経営戦略の幅広い選択肢を提示すること。アルファベットでDはEの前ですから」と生田目雅史は笑う。新しい領域へ貪欲に挑戦する思いから外資系投資銀行等を経て、2018年に東京海上ホールディングスへ参画。以来、CDOとして同社のDXを統括する。「ビヨンドインシュアランス」を掲げ、保険事業の枠を超えた価値提供を目指す東京海上ホールディングス。

21年11月に自然災害を予測し、災害発生を迅速に検知し適切な行動を促すソリューションの開発などに取り組む防災コンソーシアム「CORE」を、24年11月には企業横断型の中継輸送ネットワークの構築、運行状況の可視化などでトラック稼働率・積載率の向上を目指す物流コンソーシアム「baton」を同社主導で設立した。生田目は先導役として外部パートナー企業と自社をつないだ。COREを推進するため、23年11月には子会社として東京海上レジリエンスを設立。その代表にも就いた。

スタートアップとの協業でも生田目のコネクティブな能力が発揮され、これまで国内外数十社への出資が実現している。「当社がもつグローバルなネットワークと資金力にスタートアップの創造性やスピード感が加われば、社会に新たな価値を提供できる。ただし出資には相手企業の独自性・成長性を見極める能力と、信頼関係を構築し、協業のなかから新規事業を生み出す能力が必要です。5、6年かけてスタートアップ出資の能力を拡充してきました」

DXの成否を決める「3本の柱」

手を広げすぎて経営資源を分散させ、競争優位性を失わないために、生田目は「経営戦略との一体化」を強調する。具体例に挙げるのは先述の東京海上レジリエンスの取り組み。「気候変動の影響で自然災害が激甚化すれば、支払い保険金が増加すると同時に保険料など調達コストも高まります。当社のソリューションで事故を防ぎ、ダメージを低減できれば損害が発生しても保険金は少額で済み、双方にメリットがあります。災害『後』を扱う保険と、災害『前』に対する取り組みは極めて相互補完性が高い」

災害や不慮の事故の事後から事前に守備範囲を広げるにあたり、決定的な役割を果たすのが同社の収集してきたデータだ。「ドライブレコーダー、道路、建築物、人工衛星、契約書など当社はこれまで多種多様なデータを集めてきました。これらは保険事業の高度化や新規事業の創出に有効です。今後、生成AIにこのデータを組み込み、経営戦略の構築にも活用することを目指しています」

DXの成否を決める3本柱は「外部環境の変化に対する感受性」「独自性の追求」「既存事業との一体化」だという。生田目は、経営陣と社員の負託に応え、一貫性ある戦略でDXを推進する。


生田目雅史◎1988年日本長期信用銀行に入行。その後、金融監督庁(非常勤職員)、ブラックロック・ジャパン取締役などを経て2018年に東京海上ホールディングスに入社。21年常務執行役員グループCDO就任。24年より現職。

文=緑 慎也 写真=苅部太郎

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