DXは進んでいるのか? その取り組みは革新的なのか?─── デジタル時代の発想とリーダーシップを再定義した、特筆すべき回答が揃う。
「OneASICS」でリードした変革は、カテゴリーを明確にし消費者をデジタルでつなぐこと。まだ魂が入りきれていないと現状に甘んじないリーダーはあらゆる業務をテクノロジーで高次に引き上げる。
2024年に営業利益が大台の1000億円を超える見込みのアシックス。営業利益率は業界トップの14.7%を計画し「中期経営計画2026」を上方修正する好調ぶりだ。2020年には営業利益は赤字となるほど低迷していた業績をV字回復へと導いたのが、同社代表取締役社長COOの富永満之だ。カテゴリー基軸の経営など、主要な取り組みのほか、欠かせないのがDX戦略による支援だ。
富永が主導したデジタル戦略のひとつが、会員プログラム「OneASICS」。ランニングを楽しむためにシューズやウェアを選び、日ごろのトレーニングを記録する。それだけではなく、国内外のマラソン大会に出るとなれば、それは旅行となり、宿泊をし、食事や買い物もする。スポーツで豊かな人生を送るエコシステム構想として立ち上げた。
「『OneASICS』は、走ることをサポートするだけではありません。これまでに買収した各地域のレースプラットフォームと連携し、レースはもちろん、トレーニングや商品をトータルでユーザーに提案することで、ロイヤルカスタマーの獲得につながるのです。例えば、今、日本国内のマラソン大会でもインバウンドの出場者は増えており、こうした層に向けて特別なプランを提案することもできるようになっています。今後は、ホテルや飲食、ボディケアなど、他業種との協業も視野にランニング・エコシステムを発展させていく」
サービスを日々進化させ、会員数は2024年11月時点で1666万人と前年同期比で31.2%増、会員数の増加に比例してEコマースが顕著に伸長し、2018年時点では販売比率が約4%だったところ、2023年は約18%までに上昇。今後、さらに需要増が見込まれる中国やインドのユーザーを取り込み、2030年には3000万人の会員数を目標に掲げる。