「我々は年間計画のもと製品をつくって卸や直営店に出していくというビジネスモデルなので、デジタルを活用しやすい業種ではあるんです。だからこそ販売、開発と部門を隔てることなく、一体となっていかに在庫を減らすかといったことを考えなければいけない。また、トレンドは予測しづらいのでマーケットで何が起こっているのかを把握し、どこで何が売れ、どう利益が出ているのか『見える化』することが重要で、それならばデジタル化だよね、とビジョンを示した。私も含めてIT出身者はテクノロジーの説明に終始しがちですが、導入すると売り上げや在庫状況がどう改善され、どんなインパクトを経営に与えるのか。経営者目線でストーリーを語れるか語れないかは今後も差となって表れると思います」
ITプロフェッショナルは、情報システム部門の御用聞きではなく経営にコミットするようになり、「時代の潮目を感じている」という。真の意味でデジタルと経営をつなぐビジネスリーダーの象徴となったが、富永はスポーツの人でもある。学生時代には海外へのテニス留学も経験し、現在も続けるほど思い入れがある。人生を通じて楽しめるライフタイムスポーツだといい、アシックスにおいてランニングに次ぐ軸に据えるストーリーを描いている。
「これはぜひお伝えしておきたいのですが(笑)、アシックスのテニスシューズは主要な国際大会の男子シングルスにおいてマーケットシェアはトップ。契約選手以外のトッププレイヤーにも選ばれている機能性は強み」
アーティストのYOASOBIなどとコラボレーションしたスポーツスタイルアパレル、ミラノファッションウィークでコレクション発表する「オニツカタイガー」とエッジィな感度のファッションラインの存在感も増している。世界で勝てるアシックスのモノづくりあってこそのDX。ストーリーは、ここからが本筋となる。
富永満之◎米カリフォルニア・ポリテクニック州立大学卒業。日本IBM執行役員、SAPジャパン常務執行役員、ワークスアプリケーションズ米国・代表取締役社長を経て、2018年アシックス入社。同社は2024年「DX銘柄2024」グランプリ受賞。


