5. 惰性
ひどいマネージャーがひとたびその地位についてしまったら、排除するのは難しい。昇進の決定を下した人は、自分が間違っていたと認めたがらないかもしれないし、場合によってはマネージャーの無能さを知るのが直属のチームだけということもある。マネージャーが威圧的で、正直なコミュニケーションが報われない社風が存在するケースでは、社員が怯えて声を上げられず、有害な行動がエスカレートしていくかもしれない。
6. リーダーシップ養成の遅れ
新しいマネージャーの多くは、適切な研修や支援なしでリーダーシップ職に放りこまれる。昇進後にはリーダーシップ研修を受けるが、これは失敗するようにできている。毎年数十億ドルがつぎこまれているにもかかわらず、こうした研修の多くはマネージャーが直面する現実の問題に沿ったものではない。こうしたズレのせいで、新米マネージャーは、うまく人を導くための準備をじゅうぶんに整えられない。グッドはこう述べている。「企業はリーダーシップ養成を、継続的な取り組みとして優先的に行うべきだ。該当者が昇進するずっと前から養成を開始し、キャリア全体を通じて続くプロセスとして認識するべきだ。こうした継続的な成長に投資すれば、組織の成功を導く準備のできた有能なリーダーが育つ環境を構築できる」
7. リーダーシップ養成が個人に応じたものでない
最大限の効果を得るには、リーダーシップ養成をカスタマイズする必要がある。新しいマネージャーを養成する際の注意事項に関する専門家として有名なメリッサ・ジャニスは、「マネージャーが研修を受ける場合でも、プログラムがその人特有のニーズに合っていないせいで、最大限の効果を得るのに苦労するケースは珍しくない」と指摘する。ジャニスはこうも述べている。「コミュニケーションや権限の委譲、ビジネス上の洞察力といった幅広いトピックスを網羅する『全員に合わせたフリーサイズ方式』のプログラムでは、すぐには使えるわけではない情報に圧倒されてしまい、教わったコンセプトをどう応用するかを自力で考えなければならない。個々の立場や新たなコンセプトの応用に必要なサポートがなければ、研修は単なるこなすべき項目の一つにすぎなくなり、本来の成果を出せないまま、マネージャーにも企業にもフラストレーションがたまってしまう」