北米

2024.12.01 09:00

F-35をドローンで代替? イーロン・マスクが「コスパ最悪」のステルス戦闘機に大なたか

一般化されすぎたこのコメントには疑問も呈され、マスクが言いたかったのは赤外線カメラ、つまり戦闘機用語で言う「赤外線監視・追尾」にAIを加えたもののことだろうというフォローもあった。

ステルス技術の利点や限界をめぐっては膨大な議論があり、いまも活発に行われている。ステルスは死んだと言うのも、ステルスは不可欠だと言うのも間違いだろう。少なくとも、ロシアのステルス戦闘機が現在の戦争で目立った活動はしておらず、ロシアのステルス無人機が大失態を犯したことは注目に値する。F-35ならこうした戦争で活躍できるのか、それともたいして役に立たないのかはまた別の問題だ。

そもそも、マスクが正しいのか間違っているのかというのは問題でないのかもしれない。彼は米政府の過剰な支出を削減する責任者に任命され、削減すべきと考えるプログラムを特定したようでもある。問題はむしろ、彼がそれを実現する権限と影響力を持っているかどうかという点だろう。

防衛産業の破壊と再創造

マザー・ジョーンズ誌の最近の記事でも紹介されているように、米政府支出のうち議会の承認を毎年受ける「裁量的支出」の約半分は国防費に充てられていて、2024年度予算では8400億ドル(約126兆円)超が国防総省に振り向けられている。その半分ほどは、ロッキード・マーティン、ボーイング、RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)、ゼネラル・ダイナミクス、ノースロップ・グラマンの防衛大手5社、いわゆる「ビッグ5」に支払われる。まさに、マスクが「ディスラプト(破壊)」したがるような伝統的な産業プレイヤーだ。

そのため、彼にとって古い1990年代の技術であるF-35プログラムは明確な削減対象になる。ただ、もうひとつの側面もある。

「わたしは過去最高の予算を軍に提供するつもりだ」。トランプは自身の選挙運動サイトに掲載しているある動画でそう述べている。だとすれば、F-35のような大型プログラムが削減されても、国防支出全体は増えることになるのかもしれない。その場合、新しいプログラム、おそらく、DOGEの好むような、ハイテクを駆使したプログラムに大規模な投資が行われるだろう。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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