機械学習
今回の研究をまとめた論文の執筆者で、米カリフォルニア大学バークレー校の教授(地球惑星科学)を務めるバークハード・ミリツァーは「天王星や海王星が異なる磁場を持つ理由や、それが地球や木星、土星と大きく異なっている理由に関する優れた説が、今回の研究によって得られたと言えるだろう」と述べている。「このことが明らかになったのは、今回が初めてだ。それは水と油に似ている。ただし水素が失われるために油が下に沈む点以外は」ミリツァーが今回の新説を考案できたのは、機械学習の進歩により、加熱と加圧に伴う原子540個の挙動をシミュレーションするコンピューターモデルの実行が可能になったおかげだ。「ある日、モデルを調べたところ、水が炭素と窒素から分離していた。10年前に実行できなかったことが、現在起きていたのだ」と、ミリツァーは説明している。
極めて重要なのは、ミリツァーのモデルで生成される重力場が、約40年前にボイジャー2号で測定された重力場と一致したことだ。
NASAの探査計画は?
2021年に発表された論文で提案されている、NASAによる天王星の探査計画で、今回の新説を検証できるかもしれない。このフラッグシップミッションでは、天王星を調査するために周回探査機を送り込む予定だ。層状構造を持つ惑星は、対流がある惑星とは異なる振動数で振動すると考えられるため、探査機に搭載のドップラー撮像装置で天王星の振動を測定する必要があると、ミリツァーは指摘している。NASAが天王星に探査機を送り込むもう1つの理由は、現在確認されている衛星28個のうち、海洋天体の可能性のある5大衛星を調査するためだ。10月に発表された論文では、ボイジャー2号が撮影した画像を再解析した結果として、天王星の衛星ミランダの氷殻の下に海がある可能性が示唆されている。もしそれが真実ならば、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスなどの太陽系内の他の海洋天体と並んで、ミランダにも生命が存在する可能性があることになる。
だが、天王星に探査機を送り込むのに、地球と天王星と木星の珍しい惑星配置を利用するためには、地球からの打ち上げを2034年までに行わなければならない。木星の周囲で重力を利用する「惑星スイングバイ」を実施すれば、天王星までの航行時間をわずか11年に短縮できるだろう。
(forbes.com 原文)