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2024.12.02 13:30

人ありきのM&A、SBS鎌田正彦が描く物流業界の未来

上場当初は「吹けば飛ぶような会社だった」というが、ベンチャーがどうやって大企業に追いつき、倒せるかを考えたとき、それがM&Aだった。

「物流を核としたロジスティクスは幅が広い。アパレルもあれば鉄もある。どんなことにも『応えられる』会社にしようといろんな物流すべてに対応できるような会社を目指した」

上場後、3PL(物流の一括受託)企業として、リコーロジスティクスをはじめ次々と国内外でM&Aを実施。直近では9月にNSKロジスティックスを買収した。今や連結子会社は40、国内・海外拠点は710を超える。世界の物流を牛耳るように? と問うと鎌田は笑う。

「牛耳るようにね(笑)。でもみんな笑う。自ら描いた目標をクリアし続け、到達してきた。30年で2000億、今は4000億を超えており、さらに1兆円と言っている。その先は3兆円。難しいとは思っていない」

M&Aで大きくなったSBSの強みがもうひとつある。それは「人」だ。同社はリストラをしないことでも知られる。しかし、買収により多彩な企業がひとつになることで、経営の効率化、業務システムや人材配置など、いわゆるPMI(M&A後の統合プロセス)は最もハードルが高くなる。

「日本でM&Aというと、企業を『買う』という表現をする。買った、売ったという論理で仕事をすると絶対にうまくいかない。私は株を譲ってもらったと言っている。それで『仲間』になるんです。ホールディングスはグループの接着剤であって『親』会社じゃない。SBSは親子関係ではないんです」

SBSでは、一緒になった違う会社の社員はすぐに違和感のない状態になるという。人の数も余るくらいがちょうどいいとまで言い切る。

「私に言わせれば、PMIは人のコミュニケーションだ。仲間たちにもうける仕組みを教え、やらせてあげて、意識改革する。世界中のSBSで実践していますよ」

鎌田は、物流業界の行く末を憂いている。それはいわゆる2024年問題だけではない。多くの物流企業のPBRが1を下回るなか、SBSが強いのは鎌田自らが筆頭株主だからだと言う。

「決定権を握らないと会社は安定しない。業界の業績が不安定ななかで、これから大きな再編が始まると思っている。我々はその再編の役に立ちたい。仲間になって一緒にやろうぜと」

結局は人なんだよという鎌田のふところに飛び込んだ社員たちが、1兆円企業の原動力になる。夢の実現はそう遠くないだろう。


かまた・まさひこ◎1959年、宮崎県生まれ。小学2年の時に家業が倒産。4年かけて延岡高校を卒業。79年佐川急便へ入社。ドライバーなどを経て87年にSBSを創業。2013年東証一部(現プライム市場)上場。写真は倉庫内で活躍する自走式ロボット。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=苅部太郎

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