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2024.11.26 09:00

米EV市場で2位の「現代自動車」、次期CEOが語るトランプ政権の影響

ホセ・ムニョス(Photo by Paul Bersebach/Orange County Register via Getty Images)

ホセ・ムニョス(Photo by Paul Bersebach/Orange County Register via Getty Images)

第2次トランプ政権の誕生は、電気自動車(EV)に対する補助金の縮小やバイデン大統領が導入した厳格な燃費基準の撤廃、自動車部品の価格を大幅に引き上げる可能性のある関税の導入など、自動車メーカーに大きな影響を与える政策の変更が予想されている。

しかし、来年1月に韓国の現代(ヒョンデ)自動車グループのCEOに就任するホセ・ムニョス(59)は、どのような変化に対しても同社が準備万端だと述べている。

「当社が米国への投資を決定したのは、前回のトランプ政権下だったということを忘れないで欲しい」とムニョスはフォーブスに語り、1つの政府による政策の変更に、グローバル企業のビジネス戦略が左右されるのは賢明とは思えないと付け加えた。ヒョンデのその投資の成果の1つが、来年ジョージア州サバンナにオープン予定の同社の米国における生産キャパシティを2倍に引き上げる、55億ドル(約8510億円)規模の自動車とバッテリーの工場だ。「私たちは、EVが主流の技術になると今も信じている」とムニョスは述べている。

また、仮にトランプの新政権がインフレ抑制法(IRA)によって導入されたEV向けの7500ドル(約115万円)の補助金を廃止した場合でも、ヒョンデはそれに適応するとムニョスは主張した。

「当社は、トランプが選挙に勝利するずっと前から、EVだけでなくハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも注力することを決めていた。補助金がなくなれば、EVの販売は減るだろうが、ハイブリッド車の販売はむしろ増える可能性がある」と彼は説明した。

スペイン出身で米国籍を持つムニョスは現在、ヒョンデのグローバルの最高執行責任者(COO)を務めている。彼は、同社が先日ロサンゼルスで新型のアイオニック9を披露した際にフォーブスの取材に応じた。サバンナ工場で生産されるこのモデルは、3列シートの6人乗りの電動SUVで、航続距離は1回の充電で約482キロメートルとされており、来年初頭に約6万ドル(約922万円)で販売開始予定という。

EVへの転換は止まらない

ヒョンデは、米国の多くの自動車メーカーと同様に、米国の燃費基準やカリフォルニア州のゼロエミッション車の需要に応えるために、EV向けの新工場や電池の製造ラインに数十億ドルを投資した。カリフォルニア州は、2035年までに新車のガソリン車販売を終了したい考えだが、その目標が達成されるかどうかは不明だ。それでも、EVへの転換は、中国のBYDのような世界最大のEVメーカーとの競争力の強化という他の強力な要因によっても推進されている。

ヒョンデや高級車のジェネシス、子会社の起亜を含む現代グループは、過去数年間で米国におけるEV販売を急速に拡大し、今年はテスラに次ぐ2番目の販売台数を記録した。しかし、現代グループの2024年度第1四半期から第3四半期までの合計販売台数は、約8万9600台で、約47万1000台のテスラに大きな遅れをとっている。

一方、仮にトランプの新政権が海外から輸入される自動車部品や素材の関税を大幅に引き上げたとしても、米国でモービスやLG化学の関連会社や、SKとの合弁事業に投資しているヒョンデは、その影響を乗り切れるとムニョスは楽観的だ。

「我々はすでに非常に速いペースで現地化を進めている。関税の面では、電池や部品、組み立て工程を現地化するのが最善だと考えている」と、彼は続けた。

ヒョンデが米国での事業拡大に投資し続ける理由は、きわめて単純だ。「米国が当社にとって最も重要な市場であるという事実は変わらない」とムニョスは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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