しかし、アフリカ系米国人、つまり黒人の場合は予想どおりの結果にはならなかった。自尊感情を例にとると、白人と黒人の傾向は正反対だった。白人では自尊感情が下がるほど風邪の症状が増えたのに対し、黒人では自尊感情が高くなるほど多くの風邪症状に悩まされていたのだ。
研究チームは、この発見について幾つか考えられる説明を提示している。
情動や性格の評価は、人種グループによって異なる可能性がある。アフリカ系米国人の場合、アンケート調査への回答は「感情の抑制や(社会的に受け入れられる形での)自己表現欲求の副産物として機能している」かもしれない。
たとえば、社会が期待する「スーパーウーマン」の図式の中で生きることを強いられているアフリカ系米国人女性が、怒りの感情をあまり表に出さないとアンケートに答えたとして、それは社会から怒りをコントロールするよう期待されているためかもしれないのだ。
ワイリーは筆者に別の例を提示してくれた。アフリカ系米国人男性は、彼らのフォークヒーロー(民族的英雄)として知られるジョン・ヘンリーよろしく、どんな困難にも屈せず、強くしなやかに乗り越えていくことを期待されている。そのため、ポジティブな感情を報告した場合でも、その意味するところは白人男性と同じではない可能性があるという。
アフリカ系米国人はまた、頻繁に経験する差別への対処法として、高いレベルのポジティブな感情を経験したり報告したりすることがある。したがって、ポジティブな感情についての自己報告が多い事実は、ひるがえって、免疫系を弱体化させるストレスの指標となり得るのだ。
人種差別や構造的差別は、人々の生活に多大な影響を与えている。風邪をひくというのは、こうした影響の中でも最も軽微な事例の一つだが、「ただの風邪」と軽く考えがちな人は、自分がラッキーなのだとは思わず、特権的な立場にあるのだと考えてみてほしい。
(forbes.com 原文)