次はCMOだ!
面談の最後に、次はCMOと話すことになると言われた。本社CMOとのオンライン面接はキャリーとの面談から約2週間後に行われ、まずは前職での実績やマーケティングスキルに関する質問を受けた。
「ユーザーベース(基盤となる、確立されたユーザーの数)を2年間で3倍に拡大した実績などを数字を挙げて説明しました。
そうすると、それをどのように実現したのか聞かれたので、自分のマーケティングの考え方をアピールするため、『ターゲットユーザーに対してインタビューを行い、インサイトを発見した』という話から始めました。そして、そのインサイトに対するプロダクトの利点を打ち出し、それをキーメッセージとして大々的にテレビCMやホリスティックキャンペーン(各メディアの特性を活かし、それらを組み合わせて行う販促活動)を展開した結果、ユーザーが3倍に伸びたと説明しました」
CMOは水谷の話をうれしそうに聞き、「次はCTOと話してね」と言った。
ここで水谷は、面接プロセスの全体像を把握するタイミングであると判断し、人事担当者に連絡する。
すると、Duolingoでは、CTOとの面談の後、4~5人の面接官と1対1で30分から45分面接を行う「オンサイトインタビュー」を行い、その後に面接官全員が各自の評価を持ち寄り総合的に判断することがわかった。ちなみにこの方法は、候補者を多面的に評価できるうえ、属人的な判断に陥らず、採用のミスマッチを防ぐことができる、外資系企業では一般的な面接システムだ。
Duolingoではオンサイトインタビューの面接官全員が「YES」と判定した者のみCEOとの最終面接に進むことができる。
「一番緊張した」CTO面接
CTOとの面接が「一番緊張した」と、水谷は言う。CTOはスイス出身でエンジニア・バックグラウンドの若くクールな印象の男性だった。一般的な質問のあと、「僕はまだ日本に行ったことがない。僕が知らない日本のイメージで日本に行きたくなるようにアピールしてくれないか」と言われた。
そこで水谷が、「日本に対してどのようなイメージを持っているのか」逆質問したところ、「日本はクリーンで人が優しいというイメージがある」という返事。日本人はシャイでおとなしいというイメージはないか尋ねると、「ある」と答えた。それを聞いて水谷は「かかった!(よっしゃ、こちらの手中に入った!」と思い、次のように返したのだ。
「大阪はあなたが抱く日本人のイメージとは正反対なんだ。とてもユーモラスで、みんなギャグが好きで、いつも笑いにあふれている。ネタを振ればみんなが乗ってくる、世界の人が描くステレオタイプの日本とは全く違う日本。興味はないかい?」と。
終始真顔で聞いていた彼は「That's interesting」とだけ言って面談は終わった。
水谷は、この時のプレゼンテーションが「刺さった」のかどうかいまだにわからないという。ただ、このリアクションの薄い面談で「OK」をもらえたことで、「ひとつ山を越えられた。けっこういい線まで、行っているかもしれない」と思えたのだ。