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アカデミー賞を受賞したイミテーションゲーム。主人公が抱える切ない秘密とは。
(Courtesy of STUDOCANAL)

アカデミー賞を受賞したイミテーションゲーム。主人公が抱える切ない秘密とは。
(Courtesy of STUDOCANAL)

性的マイノリティの地位向上が叫ばれるアメリカにおいて映画業界はどの程度、このトレンドに追いついているのだろうか。

南カリフォルニア大学の研究チームは「人気映画700本における性的不平等」と題したリポートを発表した。同リポートは2014年に公開された興業収益トップ100作品の登場人物4610名を分析。その結果、レズビアンやゲイ、バイセクシャルの登場人物はたった19人のみだった。トランスジェンダー(心と体の性の不一致)のキャラクターは一人も登場しなかった。

映画産業においては「異性愛がスタンダードだ」と捉える価値観が支配的であると、研究チームは結論づけている。

LGB(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル)の登場人物を含む14本の映画の内、10本がゲイ、4本がレズビアン、5本がバイセクシャルだった。同リポートでは2007年から2014年の人気映画の内、女性が話している部分は3分の1以下だと報告しているが、同性愛の女性は酷く出番が少ないことも指摘している。LGBの登場人物の3分の2近くが男性であり、女性は36.8%のみであった。

LGBの登場人物のスクリーンへの登場数は米国の人口統計の実態を反映していない。2013年のギャラップ世論調査では米国人の3.5%がレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、またはトランスジェンダーであると推定している。全米経済研究所の2013年の調査は人口の20%近くが同性に魅力を感じることがあることを示した。また、2015年のPublic Religion Research Institute (PRRI)の調査ではレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、またはトランスジェンダーに分類されるミレニアル世代の割合は7%だという。

今回の南カリフォルニア大学のリポートは同性愛の登場人物が全シーンの0.4%に過ぎないことを示している。全米で150万人のトランスジェンダーが存在すると推定される中、人気映画に一人もトランスジェンダーが登場しないことも、ハリウッドの映画産業が現実に即していないことの証だ。

同リポートは人気映画の登場人物が白人ばかりであることも指摘した。2014年の人気映画において、登場人物の4分の3近く(73.1%)が白人だった。これはLGBの登場人物に関しても言える。84.2%が白人であり、白人以外は15.8%でしかなかった。

このリポートの著者であるステイシー・スミス教授は「この結果は性や人種の多様性という観点から見れば、悲惨な実態と言えます」と述べた。

この問題に関しては、テレビ業界はずっと良い仕事を行っている。Netflixが配信した人気ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 塀の中の彼女たち』にはトランスジェンダーの主人公が登場する。

テレビが出来ることが何故、映画では出来ないのだろう。ハリウッドは世界中の映画館に収入を依存しており、中国や中東のような同性愛に偏見を持つ市場に配慮をしているからかもしれない。

しかしその一方で、ワインスタイン・カンパニーの『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』はゲイの数学者であるアラン・チューリングの伝記映画だが、米国内のみで9100万ドル(約114億円)、海外では1億2700万ドル(約158億円)の興行収入をあげ、批評家らも絶賛した。

映画業界の性的マイノリティへの偏見は、世間のステレオタイプをさらに悪化させる懸念もある。19人のLGBの登場人物のうち、安定したカップルとして描かれたのは二人だけだった。多くのゲイやバイセクシャルたちは自らの性的指向を隠しているように描かれた。

米連邦最高裁は6月26日、同性婚を全米州で合憲とする判決を下した。しかし、映画の登場人物らが同様な権利を獲得するまでは、まだ長い時間がかかりそうだ。

編集=上田裕資

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