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2024.11.07 17:45

「日本はAIのネタを獲れ」 孫泰蔵が展望するこれからのスタートアップの勝ち筋

私たちは人と会い過ぎている

そこで、彼が取り組んでいるのが、各地のスタートアップエコシステムを連携させるための次世代のプラットフォーム。その主体は、孫泰蔵とスタートアップ投資家の大蘿淳司が共同設立したベンチャーキャピタルの「The Edgeof(ジ・エッジオブ)」。すでに試験運段階に入っており、来年の正式ローンチを予定する。

例えば、起業家であれば、財務状況、資本政策、目論見書、また本人の経歴書などを入力するとしよう。「マッチングアプリ」のように、AIによってコラボレーションに最適なスタートアップがヒットする。または、投資家であれば、その人の関心領域、自身の投資基準や投資履歴、キャリアなどを入力すれば、投資候補がリストアップされる。

もちろん、単にAIによってマッチング精度を高めただけではない。起業家が入力したレジュメは、生成AIによって、誰にとっても分かりやすく整理されるという。起業家の本職はライターではないうえ、「起業家は情熱家であるがゆえ、自己紹介が冗長になりがち」(孫)。起業家であるがゆえの弱点をAIが補う。

これは決してリアルのネットワーキングを代替するものではない。むしろ、リアルを補完するためのプラットフォームであるという。

孫はこう話す。「私たちは大量の自分の名刺を携え、『初めまして』と言いながら名刺をかき集めてきました。しかし、ほとんどの場合、何も起こりませんよね?私たちは、あまりにも多くの人と会っているのです」。

名刺交換が自己目的化している今のネットワーキング活動では、イノベーション創出は夢のまた夢。だからこそ、AIというテクノロジーの出番となる。このプラットフォームを通じて、事前に会うべき人を絞り込む。そのうえでマッチングイベントにて参加して、リアルイベントでしか実現し得ない深い対話に入るというステップが重要になる。

なお、このマッチングプラットフォームには、「ミニ泰蔵」なるものもインストールされる予定だ。孫泰蔵の書籍や記事・動画におけるインタビューをベースに、生成AIに学習させて、本人のクローンが起業家のメンターを務めるというもの。本人によれば、「精神的に安定していて、誰に対しても24時間365日対応できる」だけに、ミニ泰蔵はいずれは本人よりも優れたメンターに成長する。

私もプロ機関投資家になった

最後に孫らが率いるThe Edgeofは、ソフトバンク・ベンチャーズ・アジア(SBVA)を2023年に買収し、アジア一帯にまたがるベンチャーキャピタルとして勢力を拡大している。そのSBVAは2024年8月、「アルファ・インテリジェンス・ファンド」と呼ばれる新しい基金を立ち上げた。この基金には韓国大手のLGグループなどが加わるなど、アジア一帯のAI関連スタートアップへの投資活動にまい進している。孫泰蔵によれば、第二回目のクロージングも2024年末までに行われる予定だ。

孫自身、「私もプロの機関投資家の一人になりました」と宣言。孫がボードメンバーを務めるエンデバー・ジャパンとは、ネットワーキングや起業家支援の活動で相乗効果を引き出していくという。

文=平岡乾

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