円盤は「比類のないほど滑らか」
太陽系からわずか25光年の距離にあるベガは、誕生から4億5500万年で、太陽の年齢の10分の1だが、太陽より40倍明るい。完全に円形の円盤を持っていることにより、ベガは特異で、不可解な存在となっている。研究チームの1人、アリゾナ大のアンドラス・ガスパールは「ベガの円盤は、滑らかだ。信じられないほど滑らかだ」として「この星系は、謎に包まれている。これまでに観測された他の星周円盤とは異なっているからだ」と述べている。星周円盤は若い星の周囲にしか見られない。原始惑星系円盤としても知られ、惑星の形成につながる岩石や氷の破片や塵(固体微粒子)を含んでいる。
ベガは、さまざまな研究の対象となっている。1850年、太陽以外の恒星として初めて写真に撮影された。その22年後、観測史上初のスペクトル画像を撮影された。2021年には10年におよぶ観測の結果、ベガの周りに「ホットネプチューン(中心星の近くを公転する高温の海王星型惑星)」が存在する有力な証拠を得たとする研究結果が発表された。だがこの結果は、今回のJWSTを用いた最新研究によって覆されている。
惑星形成の仕組みを再考
ベガは、映画『コンタクト』で地球外生命体からの信号の発信源とされた。また、他のあらゆる天体の明るさを測る基準となる恒星であり、従来よりベガの等級(夜空での見かけの明るさ)を0等としている。だが、ベガの円盤の滑らかさは、天文学者を困惑させている。これは、ベガ星系の構成が太陽系とは異なっていることを意味するからだ。天文学誌Astrophysical Journalに掲載された、JWSTの観測結果をまとめた論文の筆頭執筆者であるアリゾナ大のケイト・スーは「これは、太陽系外惑星系の幅広さと多様性について再考を促している」と指摘している。スーが参加した研究チームは2013年、ベガの周囲で巨大な小惑星帯と思われるものを発見した。これは、惑星の存在を示唆していた。