クレイ:三浦半島の磯焼けはどれくらい進んでいるのでしょうか?
桝:もう、砂漠のようです。たとえば横須賀市の小田和湾(おだわわん)では2006年に390ヘクタールあった藻場(もば)が、2022年は7ヘクタールに激減しました。(編集部註:東京ドーム1つ=約4.7ヘクタール)
原因は海水温の上昇によって海藻の生育が阻害されたり、その温かい海水で活動が鈍らなくなったウニや魚が冬場も海藻を食べ続けるなど、様々です。
その砂漠のようになってしまった海の森を再生させたい、それが、僕がブルーカーボン普及に取り組む理由のひとつです。
アマモなどの海草やアカモクなどの海藻で作られる“森”は、二酸化炭素の吸収・貯留以外にも海の小さな生物には欠かせない場所なんです。外敵や潮の流れから守ってくれる海の森で、卵を産み、育っていく。ここがなくなれば魚は減り、漁師さんたちが海の幸を獲ることもできなくなってしまいます。
ですから、ブルーカーボンの活動は藻場を再生し炭素の貯留量を増やすだけでなく、失われつつある生物多様性を元に戻すことにもなるんです。
クレイ:その5市町で行う活動に対して、日本テレビが企業版ふるさと納税を利用して2400万円の寄附をされました。寄付するまでにはどういう経緯があったのですか?
荻野健(以下、荻野):日本テレビは2023年の開局70年にあわせて様々な企画を行うことになりました。私はこの機会に、この国に何か恩返しをしたい、それを企業版ふるさと納税を活用してできないだろうかと考えていました。
その時に、桝君と黒崎(太郎/当時・日本テレビ取締役常務)の二人から「ぜひブルーカーボンを検討してほしい」と。局としてもちょうど「日本列島ブルーカーボンプロジェクト」立ち上げを考えていた時期だったんです。
桝:黒崎と私は、テレビ局では珍しく大学で海の研究をしてきた人間で、海を愛する思いが強いんです(笑)。
荻野:横須賀市とも何かお仕事をできないかと考えていましたし、弊社の番組『ザ!鉄腕!DASH‼』では長年、三浦半島の皆さまにお世話になっていたこともあったので、そこから繫がっていき、BC推進会議が発足した5月に寄付させていただきました。
自治体が連携し共通課題を取り組む時代に
クレイ:地域の問題を連携して解決することは理想的ですが、議会や住民の中での意識の違いや温度感の差で苦労される場面はなかったのでしょうか。上地:何もありません。基本的に、みんな海を守ろうという意識がありますから。それと時代の流れでもあると思います。環境への意識は、皆さんこの数年で芽生えていると思います。
クレイ:首長さんの中には、よその自治体と連携して取り組みたい課題をお持ちの方もいると思います。
上地:それはあると思いますね。今だとまずは、地震や台風、豪雨といった自然災害時の防災協定でしょうね。それぞれが力を出し合う、そういう時代になったということです。