伝統と未来の融合、goyemonが創る快適な和モダンプロダクト

goyemon クリエイティブディレクターの大西 藍(写真右)とコンセプターの武内賢太(同左)

「かっこよさ」を追求したプロダクトを媒介に、若い世代が日本の伝統製品に触れる機会を創出。デザインユニット「goyemon」を展開する大西藍と武内賢太が生み出すのは、雪駄や提灯の機能美はそのままに、快適さや便利さをアップデートしたプロダクトだ。


東京・渋谷の中心街から数分歩いた静かな路地に佇む店舗。洗練された空間には、雪駄にスニーカーの履き心地を取り入れた「unda-雲駄-」や、繊細な切り子模様がありながら電子レンジ対応のグラス「Fuwan-浮碗-」などが並ぶ。手がけるのは、大西藍と武内賢太によるプロダクトデザインユニット「goyemon」だ。

彼らが生み出す製品は、単に伝統製品を現代風にデザインし直したものではない。職人の技術への尊敬と理解のもと、現代のライフスタイルに合うように便利さや快適さをアップデート。プロダクトを入り口に、「雪駄が何かも知らない若い世代」が日本の伝統製品に触れるきっかけを創出するのがgoyemonの目指すものづくりだ。

都立工芸高校のマシンクラフト科で出会い、ともにものづくりへの情熱を育んだふたり。武内は東京工芸大学に進学し照明メーカーでプロダクトデザインに携わる一方、大西は日本大学芸術学部でデザインを学び、母親が起業した会社で玩具の企画開発などを手がけていた。

それぞれの道を歩んでいた2人に転機が訪れたのは、社会人3年目のこと。学生時代からの「一緒に何かを生み出したい」という夢をかなえるべく、クラウドファンディングで“自分たちが欲しいと思えるもの”を世に送り出すことを決意した。

「当時、クラファンで人気を集めていたのは、伝統工芸品と最新ガジェット。このふたつを組み合わせたら面白いものができると思った」(大西)。

そこで目を付けたのが、愛用していた雪駄だった。「雪駄は左右の区別がなく、定期的に左右を入れ替えて履くことで、底の減りが均等になって長く使える点も魅力」と、伝統的な雪駄の機能美に惹かれていた武内。しかし、現代のアスファルトの路面では、薄い雪駄底は歩きづらく実用性に欠ける。そこで「unda-雲駄-」は、ハイテクスニーカーでも用いられるエアソールを採用することで柔らかい履き心地を実現。左右の区別がないつくりも踏襲し、日本人の「もったいない文化」を継承した。「unda-雲駄-」は、クラファン開始1週間で2160万円以上の応援購入額を集め、ユニクロやSnow Peakなど大手ブランドとのコラボも展開。海外からも注目を集めている。

この9月に発売したばかりの提灯×ソーラーLED「ANCOH-庵 光-」。提灯部分の制作は名古屋の職人に依頼して制作している。この9月に発売したばかりの提灯×ソーラーLED「ANCOH-庵 光-」。提灯部分の制作は名古屋の職人に依頼して制作している。

この9月に発売した「ANCOH-庵光-」は、企画から販売までに4年を要した。ちょうちんにソーラーLEDライトを組み合わせたもので、もともとの最大の機能である蛇腹を広げたり畳んだりすることでスイッチがオンオフする。職人の協力が欠かせない商品開発において意識しているのは、職人の工程変更を最小限にしながらいかに最新技術と融合した製品をつくるかだ。

「職人さんたちに『できない』と言われることもありますが、それは技術的なことではなく『やったことがないからできない』ということも多いです。信頼関係を築いて対話を重ねながら、新たな可能性を一緒に模索しています」(武内)

「若い人に刺さる圧倒的なかっこよさを追求しつつ、最新技術をかけ合わせて『需要』をつくることが重要。過去と未来の掛け合わせで今までになかったもの生み出し、新しいカルチャーをつくりたい」(大西)

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大西 藍◎1993年生まれ。都立工芸高校、日本大学芸術学部卒。NEWBASIC CEO、goyemon クリエイティブディレクター。

武内賢太◎1993年生まれ。東京工芸大学卒業後、コイズミ照明でのプロダクトデザインなどを経て現職。NEWBASIC CMO、goyemon コンセプター。

文=堤 美佳子 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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