幼稚舎の「お受験」事情
幼稚舎の公式HPには、以下のような記載がある。「幼稚舎の入学試験は、様々な活動を通じて志願者のありのままの姿を見るものですから、入学試験のために特別な準備は必要ありません」。
しかし実際は、子供の人生を懸けた難関試験を突破するため、多くの家庭が受験準備に相当な力を入れている。
筆者の友人Aさんの家庭ではなんと4つの塾に通っていたという。受験塾、個別指導塾、体操塾、そして「慶應会」という幼稚舎専門の塾まで、あらゆる角度からのサポートを受け、幼稚舎を目指した。「ジャック幼児教育研究所」や「伸芽会」は特に有名で、合格者を多く輩出しているそうだ。厳しい受験戦争を勝ち抜くためには、3~6歳の幼稚園時代からこれほどの準備が必要なのだ。
一方で、Bさんの家庭では「有栖川塾」など2つの塾に絞って通っていた。それぞれの家庭がどのような戦略で受験に臨むかは、個々の判断に委ねられているが、どちらにせよ厳しい競争の中での準備が求められるのは共通している。
入試で問われるのは「創造力」と「礼儀」
幼稚舎の入試では、創造力や礼儀が重視される。Aさんによると、入試では「紙コップと紐を使って遊んでください」などの課題が出されたという。このような問題は、子どもの発想力を試すもので、一般的なペーパー試験とは一線を画している。また、試験中のちょっとした振る舞いも見られていて、例えば試験中に転んで怪我をした際に絆創膏をもらったときのお礼の言い方なども評価の一部だったのではないかとAさんは推測する。
また、Bさんの話によれば、図工や体育が入試の主な科目だった。図工では「未来の自分」や「憧れの自分」を描く課題が出され、子どもの自由な発想が試されたという。また、体育では、無意識の行動を観察して子どもの注意力や協調性が評価されるという。幼稚舎の入試は、知識だけでなく、子どもらしさとその中に秘められた潜在力を見抜くものなのだろう。