カラーは2色あり、ひとつは裾が紅からピンクに移り変わり、胸部分がブルー、肩が淡い黄色へと続くデザインです。夕焼けの空をイメージし、「黄昏」と名付けました。もうひとつは裾が紫からイエロー、薄紫へと変わり、胸元がイエロー、肩へと緑が移ろうデザインです。朝焼けの空をイメージし、「暁」と名付けました。
──最後にどんな人に着てもらいたいですか。「一生着られる振袖」に興味のある読者にメッセージをください。
この着物は、ものづくりの背後にある職人の想いや文化に思いを馳せてくださる方に、手に取っていただけたら嬉しいです。また訪問着の展開もしているので、海外へ行く機会がある方に日本の文化のユニフォームとしてぜひ着てもらえたらと思っています。今回の着物制作でもう一つこだわったのは、作り手の「見える化」です。呉服屋や百貨店で目にする着物は、ブランド名や一人の作家名、あるいはプロデュースをしたタレントの名前が表に出ていますが、その陰には多くの職人たちの手仕事があります。彼らの技と思いが、一枚の着物にどれだけ込められているかを、着る方にも感じ取ってほしい。そんな思いで、このプロジェクトを進めました。
空の移ろいを表現するため、刷毛使いでグラデーションを生み出す京都の伝統工芸「引き染め」を営む高山染巧の職人が手がけています。通常は裾や肩のみのぼかしが一般的ですが、今回は5色を使うことで圧巻の美しさに仕上がりました。白い雲は、京友禅伝統工芸士の細井智之さんが、日本の伝統的な顔料「胡粉」を使った熟練の技術で優雅な印象に。金彩は、母と娘で営む京都の工房「金彩 上田」の職人技を駆使して多彩な表現を盛り込みました。
そうして作られた着物は、成人の日など式典の振袖はもちろん、訪問着としても一生ものになるはず。この着物を通じて、日本の工芸の素晴らしさや、ものづくりの尊さを感じ取ってもらえると嬉しいです。
「一生着られる振袖」の試着会を10月12、13、20日に東京都文京区本郷の澱々で、京都では10月26、27日に京都市下京区本燈籠町の大西常商店で、いずれも12時〜13時半、14時〜15時半に開く。(予約はこちら)
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