経営・戦略

2024.09.28 12:15

【緊急対談】「次期市長公募」の四條畷市長 x 都知事選5位「令和のダ・ヴィンチ」

安野貴博氏(左)・東修平氏。対談は都内のForbes JAPAN編集部と大阪府四條畷市の東氏の自宅とをつないで行われた

“市長が言うことは正しい” ──望ましからぬ「議論なき信任」


安野:東さんは市長を8年やられてきた。長く市長をやることの弊害があるから、新陳代謝を促した方がいいと考えたということなのでしょうか?

東:一定の公約を果たしてきたという中で、やはり長く1人の人間が市長をやってしまうことによる弊害のようなものも出てきていると僕は感じています。
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例えば、“市長が言うことは正しいのでは”という空気が醸成されていくという問題があります。四條畷市は12月の次期市長選挙で電子投票を実施します。電子投票は過去に最高裁判所で選挙無効の判例も出たこともある難題で、他の自治体がなかなか踏み出せなかった政策です。そこを四條畷市では、投票所にタブレット等を置く形で実施しようと電子投票の条例を提出した。すると、当日1時間ほどの審議で議会を通過したんです。もちろん事前には丁寧に内容を説明していましたし、信頼をいただいたという意味ではありがたいのですが、厳しい指摘がほとんど無かったことにどこか不安を覚えたことも事実です。

さらには、次期市長選に他の方が立候補するという話が聞こえて来ないという問題もありました。もし僕が出馬を目指したら無投票再選になってしまう可能性が高い。僕が28歳のときに故郷である四條畷市長選に立候補しようと考えたのは、人口減少が続き財政が悪い中で、当時の現職市長が無投票再選になりそうと知ったからです。

背景は違えど、同じことが自分にも起ころうとしていた。無投票というのは4年に1度、市民が街のことを考える貴重な機会を失うことを意味します。無投票再選はおかしいと考えて選挙に飛び出した者として、それでいいのかという違和感もありました。
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安野:いいですね。自分を客観的な目線で見て、それ自体が少し問題なのではないかと言える首長がどこまでいるのか。

東:もう1つ、取り組むべき課題としては、評価システムの構築があります。どういうことかと言うと、公募の面接とか質疑の中で真の資質を見抜くということには限界があると僕は考えています。もし、人材を間違えたとなったときに、正しく是正できるか。

首長を客観的に評価する指標はないんですよ。例えばスタートアップ企業とかの場合は経済的、経営的な指標を出していけば成長性を見ることができる。しかし、首長の仕事は地域ごとに環境が違う中で仕事をするので、評価基準が曖昧なのです。

例えば『人口増』を評価するにも、政策が評価されて人口が増えることもあれば、単純に電車が伸びて駅が出来ただけとか、田んぼが開発されてマンションが林立しただけという場合もある。それを評価とは言えない。それこそ安野さんが出られた都知事選の争点もそうですよね。

安野:ええ、わかりますよ。僕もそうだと思います。

東:選挙というのは4年の任期付職です。首長は市民から4年間自治体を託されると同時に、この4年間は評価期間でもあるわけです。これを客観的に評価するシステムをしっかりと構築する必要がある。特に大事にしたいと考えているのは、4年後に評価が良くなかった場合、首長を変えることが出来る仕組みも併せて作ることです。
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取材・文=赤石晋一郎 編集=石井節子 撮影=藤井さおり

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