挑戦者を増やしてこその改革。政治未経験の20-30代首長が増えてもいい
──若い世代が政治に参画する意義は、どこにあるとお考えですか。東:首長に高齢者が多いという状況のなかで、行政の施策には20年後にようやく意味を持つものも数多くある。その時どうなるかというと、当時の責任者がいないという状況が生まれる。
だからこそ、僕らのような30代の人間が政治をやる意味として、常に歴史という法廷に生きたまま立ち続けることが出来るところにある。首長を退任した後も政治家が責任を負い続けるということは、結構重要なことだなと考えています。
一方で課題は、若者が小さな市の選挙に出たときに“色物”と見られることが多いことです。落選したときに普通の仕事に就きづらいとか、あの人は選挙に出た人だとかというようなレッテルを貼られる。安野さんのように都知事選に出馬して評価が上がるというケースは本当に特別で。偏見を持たれるような風潮をどうなくしていくのか。
安野:地盤とか組織の力がない人であっても、本当に志があって運営能力がある人材は在野のなかに多くいるはずです。彼らをサポートしていくような仕組が逆になぜ今までの日本になかったのかと思いますね。それくらい現役の市長が後継者を公募するという取組みは新しい。新陳代謝が遅れている今の政治課題を解決する可能性がある、意義深い取り組みだと思っています。
東:20、30代のキャリアプランとして、首長を4年~8年とかやるという選択肢もあるよね、という感覚にしていきたい。スタートアップでは普通に若い時に起業、投資するという流れがあるのに、なぜか首長のレイヤーにはそれがない。ここを変えたい。
安野:外からの知見を持ち込むことができるので、政治の世界の新陳代謝が改善することには意味があると思います。
東:挑戦者を増やすことが、ひいては日本を改革していく上で意味があると思っています。28歳で首長に就かせていただいた者として、若い世代が政治に挑戦しやすい環境づくりをする責務があると思っています。
東修平(あずま・しゅうへい)◎大阪府四條畷市生まれ。京都大学で原子力について学び、修士(工学)を取得した後、外務省へ入省。二国間・多国間の自由貿易協定交渉に携わる。その後、野村総研インドに転職し、アジア新興国を中心に企業の戦略策定を支援。父の病をきっかけに地元の現状を知り、生まれ育った故郷を未来へと繋ぐべく、出馬を決意。2017年1月、28歳で初当選。対話を重視したまちづくりを理念に掲げる。公民連携による施策を多数展開し、11年ぶりの人口の社会増を実現。また、徹底した行財政改革により、31年ぶりの財政構造の健全化を達成。デジタルを活用した全国初施策も多数創出。
安野貴博(あんの・たかひろ)◎AIエンジニア。SF作家。起業家。東大松尾研からボストン・コンサルティング・グループを経て、M-1グランプリにロボット漫才で出場を果たし、LLM(大規模言語モデル)を応用実装する企業などを連続起業。さらにロイヤル・カレッジ・オブ・アートで生成AIも駆使し準修士を取得後、執筆したSF小説で新人賞受賞。まさに博覧強記、「令和のダヴィンチ」だ。2024年には東京都知事選にも出馬、従来の「ブロードキャスティング型」の代わりにAIを駆使して有権者の声を聞き取る「ブロードリスニング型」の選挙戦を展開、得票数15万票で第5位となる。2024年、「Forbes JAPAN カルチャープレナー30」に選出された。