3. 寛容の罠
敬意を欠いた行動や、悪意ある行動を受けたときに、「優しく」寛容でいることは、忍耐の心の表れのように見えるが、しばしば逆効果になる。パートナーの行動を許し、不満を言わないことで、対立を避けられるという期待や、あるいは、自分の優しさに接した相手が行動を変えてくれるだろうという期待があるのかもしれない。だが、ネガティブな行動を無視したり、大目に見たりするのは結局のところ、そうした行動をとっても何の結果も伴わない、と相手に伝えているのと同じであり、不健全な行動パターンを維持、あるいは悪化させる可能性が高い。
嫌味や揚げ足取りのようなパッシブ・アグレッシブな(受動的攻撃行動の)発言、思いやりのない行動、常態的な遅刻といった無作法を許すことは、改善よりも、こうした状態の慢性化につながりがちだ。こうした関係性は時とともに、あなたの自尊心を傷つけ、不均衡な力関係を固定し、あなたのニーズや境界線が常に軽んじられる結果に至る。
片方がオープンなコミュニケーションを求めているときに、相手が対立を避けて意見を言わずにいると、反芻思考や考えすぎにつながり、やがては関係への不満が高まることが、研究からも明らかになっている。逆に、2018年に『Journal of Social and Personal Relationships』に掲載された研究が示すように、深刻な問題に対処し、本物の変化を促す上では、受動的な寛容さよりも、直接的な対決の方が効果的だ。
こうした事態を避けるためには、明確な境界線を引き、有害な行動に毅然として対処することが重要だ。優しく接することで敬意を払われなくなるのでは、元も子もない。自分の意志をはっきりさせることで、相互の尊敬に基づく健全な恋愛関係を築くことができる。
自分はすでに「優しすぎ」の罠にはまってしまっていると感じたあなたのために、こうした負の側面から抜け出すためのいくつかの方法を紹介しよう。
・思いやりのある正直さを実践する:優しさを保ちつつ、自分の本当の感情を正直に表明する。こうすることで、真正さと相互の尊重に根差した関係が実現できる
・セルフケアの手段として「ノー」の価値を認める:相手からの要求が自分を疲弊させるものであるなら、それを断れるようになろう。ノーと言うことは、愛情や思いやりがなくなったからではない。あなたのエネルギーと境界線を維持するためなのだ
・関係性の在り方を定期的に振り返る:定期的に時間をとり、自分のニーズが満たされているか、妥協しすぎていないかを振り返ろう
・協働的な問題解決を図る:意見対立を避けるのではなく、パートナーと力を合わせて積極的に問題を解決しよう。問題を先送りにせず、チームワークで取り組むことで、関係性はより強靭なものになる
(forbes.com 原文)