──エンターテインメントへの期待というお話がありましたが、そのために新アリーナで意識している事はありますか?
木村:ホームアリーナとして千葉ジェッツが使うのは年間30日ぐらいですので、あとの多くの日にちを音楽ライブやエンタメ興行でしっかりと利用していただけるようにしなくてはいけません。
例えば7月13・14日には、モンストをはじめとするゲームの世界を全身で感じる未体験ライブエンターテイメントショー「DREAMDAZE Ⅱ (通称:モンドリ)」を主催しました。
また、こうしたライブ興行への対応も強く意識し、搬入搬出のトラックが中にそのまま入れる作りにするなど、設営がしやすい設計を徹底して目指しました。
当社の技術部門も入って、音響や配信のラグなどの細かいところを見ていたりもします。
──こけら落としもMr.Childrenのアリーナツアーで、その後もライブ公演が続いています。手応えは?
木村:ミスチルさんほどのトップアーティストの公演で、音響についても非常によいアリーナだと言っていただいているので、設備のクオリティとしてはかなり高いものを作れたというふうに考えています。
ただ一方で初年度ということで、まずは試しに使ってみようとか、ご祝儀的な部分もあると思うんですよね。
お越しいただいたお客様、興行側の皆さんの評価をきちんと見ながら、どんどん改善していって、長く使っていただける箱にしていきたいです。
──バスケ興行と音楽・エンタメ興行の「設備面の両立」の難しさはよく言われるところですが、いかがでしたか?
木村:やはりバスケ観戦に適した環境と音楽ステージにとってよい環境とでは、コンフリクトする部分はゼロではないですよね。
例えば、先ほどお話したVIPエリアについても、ベランダのようにアリーナにせり出した設計になっているので、部屋の光が漏れたりして演出の邪魔にならないかとか、そもそも鑑賞スタイルやカルチャーが違ったりもします。
VIPエリアに関してはスポーツ向けに寄せさせてもらいましたが、他にも細かいところまで色々と議論がありました。現場ではかなり侃侃諤諤、バスケなりの考えや音楽興行としての意見を本気でぶつけ合って、作り上げてきました。
日々の仕事の中でサラリーマン的なジャッジや忖度はあり得るし、揉めたくない、これは譲っちゃってもいいかとかいう場面もままあると思うんですけど、新アリーナではとにかく、対話なく意思決定することはなかったです。その熱量がなければ良いものにはならないですよね。
──バスケ興行では、これまでのホーム「船橋アリーナ」での5千人から、倍の集客が求められます。勝算は?
木村:逆に、席が足りるんだろうか?といった危機感があったりします。
電車でのアクセスもとても良くなりましたし、渡邊雄太選手の加入も含め、ファンの皆さんに本当に見たいと思ってもらえるものをこれでもかってくらいご用意しようとやってきましたので!
そして、今後バスケカルチャーがもっと育っていって、Bリーグの箱として本当に1万人クラスのアリーナで足りてるんだっけ?といった議論が起こるぐらいになるといいなと思います。NBAでは2万人超のアリーナも多いですからね。
──早くも、1万人規模のアリーナでいいのか?と。
木村:もちろん2万人規模のアリーナを埋められるバスケ以外の興行がどのくらいあるのかといったことや、そもそもバスケ自体についても、NBAとは放映権料や2018年から合法化されているスポーツベッティングなど、経済規模や収益構造が大きく違いますので、かなり難しいのは事実です。
ただ、一足飛びにはいきませんが、きちんとした財源を作って民主的に進めていければ、日本でも2万人規模のバスケットボールアリーナは全然あり得るんじゃないかと考えています。