MIXI、悲願の「夢のアリーナ」三井不動産と開業 木村社長がスポーツ事業のねらい語る

LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ) 写真=TOKYO-BAYアリーナマネジメント


──子会社だったC2Cチケット売買サービス「チケットキャンプ」運営会社のフンザ(2018年事業終了)によるスポーツの事業やスポンサーシップが行なわれていましたが、別途MIXIとして、2017年の「千葉ジェッツふなばし」とのパートナーシップ契約を皮切りに、2018年に「FC東京」のクラブスポンサー契約や堀米雄斗選手などとの個人スポンサー契約、2019年には「東京ヤクルトスワローズ」とのスポンサー契約などを締結して、スポーツへの関与を推進していきました。そもそも、なぜスポーツだったのでしょうか?

木村:2つポイントがありまして、まず私たちは「コミュニケーション屋」として、スポーツでなら、私たちが事業展開してきたSNSやゲーム同様、みんながパッと一緒に盛り上がれるコミュニケーションの場を提供できる、コミュニケーションがもっともっと盛り上がる機会を提供できるんじゃないかと考えました。

そして、もう一つの大きな興味関心として、「スポーツの民主化」がありました。テクノロジーもそうですが、まだ民主化がそこまで進んでいないという現状があって、誰でも参加できて楽しめるものにしていくことで、ウェルビーイングをより高めていけるのではないかという想いがありました。

IT企業とは色々なものを民主化していく営みだと思っていて、例えばSNSによって、以前はマスメディアが一手に担っていた情報発信ができるようになったことも一つの民主化だというふうに捉えていますし、マネタイゼーションの面でも、モンストのようなスマホゲームで、一部の方に課金していただいて、その収益が支えとなって、多くの皆さんに無課金で遊んでいただいていることもそう言えるのではないでしょうか。「富の再分配とも言えるエコシステム」が成り立っているがゆえに、カルチャーとして大きく伸びているというのが、インターネットサービスだと思っています。

じゃあ、スポーツももっともっと民主化していけたらいいんじゃないかと。

国主導とか地域行政主導でやるのではなくて、民間企業がきちんとビジネスをして、富の再分配をしていくことで、より多くの人がカルチャーとしてスポーツにアクセスできるようにするのが理想像だという考えから始まっています。
MIXI代表取締役社⻑の木村弘毅氏

──そして、千葉ジェッツ、FC東京をそれぞれ2019年、2022年に子会社化されました。なぜクラブ経営にまで踏み込んだのでしょうか?

木村:旧来の日本のスポーツビジネスでよくあるパターンとして、親会社からの手厚すぎるとも言える財政的支援に依存してきた面が大きく、ミルクマネーというと言葉が悪いかもしれませんが、クラブ自身がなかなか事業としての高みを目指しにくい傾向があるのではないかと気になっていました。

でも、親会社を頼らずにプレーやサービスのクオリティを上げ、多くのお客様や魅力的なスポンサーに応援していただくための努力をしていくことで、自立どころか、どんどん大きくなっていけるはずで、そこにファン、サポーターの皆さんに参加いただくことで、さらにもっと大きく育っていけるのではないかと強く感じていました。 

SNSやスマホゲームって、場を提供するだけだと全然盛り上がらなくて、ユーザーの皆さんがある意味、色々と勝手に盛り上がってくださって、大きく広がっていくものなんですよね。

それこそが本当に美しい、私たちがインターネットの世界ですごく影響を受けてきた「民主化された状態」なんじゃないかなと思っていて、私たちはそういうプラットフォームだったり、触媒的な存在でありたい。スポーツでもそういったことを実現したいと考えました。

──千葉ジェッツ、FC東京を選んだ理由は?

木村:やはり成長したいという想いがあるかどうかがすごく重要で、例えば千葉ジェッツは、前社長で現在Bリーグのチェアマンを務めていらっしゃる島田(慎二)さんが、ホームアリーナを建設して更なるスケールを目指していきたいという強い意志と、建設できる経済規模のベストオーナーに千葉ジェッツを引き継ぐ構想をお持ちでしたので、共に歩んでいけると確信しました。

もちろんFC東京にしてもそうですが、組織として、MIXIからの出向者もいれば、プロパーのスタッフもいて、一緒にやっていこうという中で、しっかりと上を目指していきたいというカルチャーが合わないとなかなか難しいですよね。
左)千葉ジェッツふなばし (c) CHIBAJETS FUNABASHI/PHOTO:KeisukeAoyagi|右)FC東京(Photo by Etsuo Hara/Getty Images)

左)千葉ジェッツふなばし (c) CHIBAJETS FUNABASHI/PHOTO:KeisukeAoyagi|右)FC東京(Photo by Etsuo Hara/Getty Images)


──千葉県船橋市、東京都という本拠地や、バスケットボール、サッカーという競技についても、特別の狙いはあったのでしょうか? 

木村:東京都市圏のクラブだったというのは大きかったです。民間主導できちんと自活していくモデルを作っていくファーストステップとして、非常に重要な経営判断でした。

同様に、サッカーとバスケだったことも重要な要素を持っていたと考えています。

──バスケが好きとか、FC東京のファンといったわけではなくて、ビジネス的なポテンシャルで判断されたということですね。

木村:両方とも大好きですけど、それだけではないという......。

これもなかなかお答えが難しいんですよ(笑)。いつもビジネスのことばかり語っていて、「木村さんは本当にサッカーのことが好きなのか?」とよくSNSとかで叩かれたりします。
MIXI代表取締役社⻑の木村弘毅氏

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画像提供=MIXI 編集=宇藤智子

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