テクノロジー

2024.09.23 10:00

「木が牛の飼料に」日本の巨大フードテック知られざる全貌

木から生まれた牛のエサ「元気森森(R)」は日本製紙の製紙技術から生まれた高エネルギーで高い消化率を持つ画期的なエサだ。

丸紅が静岡県に建設中の日本最大級陸上養殖

陸上養殖は日本では商業レベルでの展開が難しいとされてきたが、この現状を打破しようとしているのが丸紅だ。
丸紅のアトランティックサーモンの陸上養殖施設。7ヘクタールもの広さを持つ敷地面積を誇る。販路や加工業者との太いパイプを生かし供給にも注力。

丸紅のアトランティックサーモンの陸上養殖施設。7ヘクタールもの広さを持つ敷地面積を誇る。販路や加工業者との太いパイプを生かし供給にも注力。

同社はノルウェーの陸上養殖事業者プロキシマーシーフードと提携し、静岡県小山町にアトランティックサーモンの養殖場を建設中である。このプロジェクトは、実証実験の段階を超え、産業レベルでのビジネス化を目指している。年間生産量は約5300t(HOG:頭付き内臓抜き)を見込んでおり、24年には初出荷を予定、27年にはフル稼働により年産約5300tを達成する計画だ。
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年間約5300t超という数字は、大きな期待を感じさせる。なぜなら、20年時点で日本国内の海面養殖全体で97万t程度しかなく、サーモン養殖生産量に関してはほぼ数字が取れないほど微量だったからだ。その割にはサケ・マスの輸入量は昨年で約20万tもある。

建設中のこの施設は、日本最大級のトラウトサーモンの陸上養殖施設となる。敷地面積は約7ヘクタールと広大だ。施設では、オランダのボスマン・ファン・ザール社製の最新鋭ハウスを採用し、閉鎖循環式養殖システム(RAS)を使用して水の使用量を最小限に抑えている。環境に配慮したトリジェネレーションシステムを導入し、コンピュータ制御による24時間体制の環境管理を行っている。

環境への配慮も徹底しており、排水処理を徹底することで海洋汚染のリスクを最小限に抑えている。卵はアイスランドの有名なストフンフィスカー種を使用し、卵から出荷サイズ(約5kg)まで22~24カ月かけて飼育される。厳格なバイオセキュリティプロトコルにより、汚染や病気のリスクを最小限に抑制し、ワクチン接種や投薬の必要がないため、魚の福祉環境も向上している。
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丸紅はこのプロジェクトにおいて10年間の独占販売権をもち、東京、名古屋、大阪という三大消費地に近い立地を生かして鮮度の高い製品を提供する。また、世界で初めてシセロ社のダークグリーン分類を取得し、日本格付研究所(JCR)から持続可能性に関する取り組みで最高ランクを獲得している。

「生産」だけではフードテックとはいえない

紹介した企業の取り組みは、独自のテクノロジーだけが特徴ではないことを付け加えておこう。

日本製紙の技術は、素材となる森林資源を自社で管理し、資源を循環型の活用サイクルに位置付けることでその価値を高めており、輸入飼料から国内飼料への切り替えが進むことで食料自給率にも好影響をもたらす。
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文=大野泰敬

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