すると、「大学生を募集したいが、中小企業が大学の就職センターに行っても門前払い」「インターシップを受けたいがルートがない」「そもそも知られてないから学生が応募に来ない」などの話が聞けました。
一方で、近畿大学の文能照之教授からは「中小企業研究で派遣できる企業を探している」「共同研究で中小企業の価値発見のプロジェクトを実施したいから企業を紹介してほしい」などの相談を受けていたため、毎年、数社を紹介していたのです。
仮説を立て、その仮説を信じ、行動すること
そこで、私は文能教授に「八尾市として数社、プロジェクトに参加してくれそうな企業を集めるから、教授のゼミの学生をインターンシッププログラムに参加してもらえませんか?」と話を持ちかけ、1年目は、ゼミの25名程度の中から希望者11名がプロジェクトに参加してくれました。インターンシッププログラムの企画も「企業とのマッチング」から八尾市産業全体や中小企業に関するレクチャー、プログラムの集大成である企業の魅力発信のためのワークショップイベントまで全て企画立案して運営までやりました。かかった予算はゼロ。(交通費や印刷費などはかかりましたが。)
ありがたいことになんとそのゼミ生の宮西君が一人が、インターン先の一社、アベルに就職したいと言い出したのです。当時、アベルの居相浩介社長も新卒採用をしたことがなく、新卒を受け入れる体制が整っていなかったので非常に悩んでましたが、面接などの選考を経て、見事、採用されることに!この報告を聞いた時は、居相社長と二人で京都のとあるイベントで八尾市のPRをしに行く途中の車の中で少し涙を流した覚えがあります。(宮西君はあれから5年が経った今でも元気に同社で活躍しています。)
この時の仮説は「中小企業を深く知るきっかけがあれば、学生も企業に就職したくなるのでは」という考えでした。中小企業かつ、特にBtoBの会社はそもそも知るきっかけが極端に低いので、どうしても学生にとってはそこで働くイメージがしにくいです。職業観はどのように養われるかというと、そこで働くイメージができたり、そもそもどんな仕事をしているのかがわかるなど、意外と単純なことだったりします。
今回は、その溝を埋めるために、中小企業と学生の接点づくりからスタートし、気づけばその魅力に気づいた学生が就職するといった、なんとも遠回りな方法で課題を0円で解決することとなりました。
このプロジェクトで分かったことは「知れば中小企業の魅力がわかる」ということ。アベルさんの場合は、ステンレスの電解発色で「アベルブラック」(当時はピアノブラック)という技術を持っており、日本でも世界でも評価されていたにも関わらず、知られていない。でも、実際は、レクサスのドアなどにも採用されたり、名だたるハイブランドのショーケースの建材として活用されたり、小さいながらも世界に影響を与えている会社なんです。
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黒色ステンレス市場が開花。競合を突き放す攻めの手