自分にはできないではなく、自分だけではできないという発想へ
こんな話を研修でしていても「自分にはできない」と思ってしまう受講生も多くいます。でも「自分だけではできない」からこそ、同期や先輩、上司を頼ってできるように導いていくという発想を持ってほしいと伝えています。何を隠そう筆者である私も行政の中の調整には一苦労。ですが、直属の上司の課長(当時は係長)と一緒に、「中小企業支援のために、どうしたら行政内部で合意が取れるか」を常に考え、あの手、この手の策を練っていました。もちろん自分たちだけがメリットがあるというよりは、行政内部でも顔の見える関係性をつくるように──例えば教育員会が子どもたちに中小企業を知るための企画をしたい時には、課外授業の構成からワークショップをしてくれる企業の確保や、子どもたちが安全にプログラムを楽しむことができるようにと導線確保などもすべて協力しています。
「変態力+妄想力+行動力=創造力」
これまでの話をまとめると、まちづくりに向き合う時に大切なのは、共創です。言わずもがなですが、一人で解決できる課題はそうそうない。なので、一緒になって解決していくことが大切です。そこで、行政マンには特に「変態力」が求められていると考えています。
私たちが生きるこの時代は、時に変化が激しい。そうなってくると、計画を一年前に立てて、それをその次の年に実行していくというスピードでは遅いかもしれません。そこで、「変態力」が必要になってくる。「変態力」とは常に柔軟な姿勢で世の中の変化やトレンドに対応できる力です。さらには、「妄想力」。理想をしっかりイメージし、信じ切ることが大切です。
かの起業家スティーブ・ジョブズも「自分なら世界を変えることができる。そんなことを本気で信じた人たちがこの世界を変えてきたのだ」と述べています。世界まで変える必要があるかは別として、行政の仕事は課題を解決してまちをより良い方向に進めることだと考えています。つまりは、何か今の現状を変えないといけない。そんな時に、悩みすぎるのもよくない。信じて進む中で正解を導く力も必要だと感じています。
そして文中でも触れた行動力。この3つをバランスよく発揮していくことで課題が山積しているまちづくりに向き合い、仲間と共に創造力を発揮していく。そうすることで開ける道があると信じて、民間企業に移った今も私はさまざまなまちの人たちと最適解を探しながら、それぞれのまちの歩幅に合わせて共創のタネを蒔き続けています。