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2024.09.13 16:00

新型iPhoneでアップルが描く「パーソナライズされたAI時代」

アップルとしては、そうした領域は、一般的なクラウド上のAIチャットサービスをユーザーが選択した上で利用すればよいというスタンスだ。このため、iOS18の中にはOpenAIのChatGPTにシームレスに接続するためのオプションが用意される。

Apple Intelligenceは、そうしたジェネラルなAIチャットサービスの領域をカバーするものではなく、iPhoneに集まってくるユーザー自身の行動、集まってくる情報を学習し続けることで、誰よりもユーザーの背景情報を的確に知る「パーソナライズされたAI」アシスタントとなることを目指している。

つまりiPhoneを使えば使うほど、Apple Intelligenceはあなたのことをよく知るようになり、より手放せない道具となっていく。しかも製品と深く結合されているため、クラウドサービスのようにネットワークサービス単体として利用することはできない。

すなわちiPhoneからの離脱を防ぐ、アップルとエンドユーザーのエンゲージメントを大幅に強化する要素として見ると、極めて強力なものと言えるだろう。

しかしこのストーリーはiPhoneだけにとどまるものではない。

あなたの個人的な情報を把握して育っていくアップルのAIサービスは、他のアップル製品にも広がっていくと考えるのが自然だ。ユーザーインターフェースの手段が限られている。Apple WatchやApple Vision ProにこれらのAIサービスが組み込まれるならば、アップルのエコシステム全体が飛躍的に高まる。

なぜApple Intelligenceはユニークなのか

Apple Intelligenceの最大の特徴は、ユーザーの生活のあらゆる側面を理解し、学習する点にある。個人の行動パターン、好み、家族関係、同僚との関係、友人関係など、複雑な個人情報のネットワークを学んでいく。

これはクラウド上のサービスでは不可能なことだ。

例えばGoogle Workspaceでメールとスケジュールを管理していても、社外パートナーや取引先と別のメッセージサービスを使うことは少なくないだろう。時にSNSを交えながら連絡をする場合もあるはずだ。SlackやAsanaといった業務で人気のコミュニケーションツールに集まる情報も反映されるわけではない。

ユーザーの取り扱う情報全体を単一のクラウドAIサービスが学習、把握することは不可能だが、Apple Intelligenceであれば、アプリを通じて集まってくる情報をAIアシスタントの情報源とすることができる。

もちろんここで話している可能性には、未来のことも含まれている。Apple Intelligenceの初期バージョンがどこまでの情報をAIサービスの情報源として、取り込めるかはまだよくわかっていない。何よりアップル自身がこれはベータ版だと言っているからだ。しかし、iOS 18が搭載する標準的なアプリの範囲内であっても、その利便性は容易に想像できる。
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編集=安井克至

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