自分にとって仕事はすべて
起業したインテリジェンス(現 パーソルキャリア)では、まず新卒採用のコンサルティングをやることに決めました。創業メンバー4人は全員20代前半で若かったですから、新卒採用の領域であれば、お客さんに話を聞いてもらいやすいのではと考えたのも理由のひとつですが、それ以上の決め手がありました。当時、いろいろな市場予測に関する資料を見ていくなかで、日本の若年人口が確実に減少していくことを知り、「未来は確定しているんだな」と気が付いたのです。今の出生数がそのまま20年後の20歳の人口になるというのは面白いなと。若年人口が減っていくと、企業と働く人の関係性も変わっていきます。一方で、当時の日本には、その変化を支えるためのインフラがありませんでした。そこで、これは社会的に意義のある事業なのではないか、自分がやるべき天命なのではないかと思ったわけです。
それでも、4人で始めた会社ですので、実際にやれることは、とにかく実績をつくって、少しでも組織を大きくしていくということでしかありませんでした。今、振り返ると、当時は完全にブラックな働き方でしたね。夜中でも土日でもひたすら働いて、家にも帰らずに、資料の入った段ボール箱を横に並べてベッド代わりにして休みをとるような生活でした。自分にとって仕事はすべてでしたし、自分に強いリーダーシップがあるとも思っていませんでしたから、とにかく人一倍仕事をして、一生懸命に会社のことを考えてやっている背中を見せていくしかないという思いでした。
そこからは、割と早くに社員が増えていき、自分なりのやり方で、組織マネジメントの考え方を固めていったのが20代後半です。その頃は、あえて特徴的なことばかりをやっていましたね。世の中の一般的な人事制度をそのまま導入することをせずに、どんな評価制度にするかを役員たちと日夜夢中になって議論していました。例えば、今でいう360度評価のような仕組みの先駆けとして、人材の能力を全50項目ぐらいに点数化して評価するシステムも開発しました。