逆境下で見出した成功パターン
ただ、90年代に入ってバブル経済が崩壊し始めると、企業の新卒採用も急激な坂道を下っていきました。市場がどんどん縮小していくなかで、会社を成長させていくというのは、坂道をギアのない自転車で漕いでいるような苦しい感覚でした。新卒採用コンサルに依存しない収益構造をつくるために、人材派遣ビジネスに参入するなど、いろいろな手を打っていき、環境変化に対応していく底力をつけていきました。自分なりのパターンをつくれたなと思ったのが、まさにそのころです。実は派遣ビジネスをやることは当時、周りの役員たち全員から反対されていました。なぜなら派遣会社はすでに世の中にいっぱいありましたから。でも、自分のなかでは変な自信があって、絶対にやるべきだと確信していたんです。そこで、他の役員たちには、派遣ビジネスには携わらなくていいから、今まで通りに事業をやってくれと伝えて、自分ひとりで立ち上げることにしました。
結果的に、既存の事業を守りながら、リスクを大きく取らずに新しい事業を立ち上げることができて、全体としては成功していきました。その後も、何度か同じやり方で実績をつくっていくと、「成果を出すまで宇野は頑張ってやるんだろうな」という空気感が出てきて、周りも反対しないようになっていきました。
このことは、実は今のU-NEXT HOLDINGSでもあまり変わっていないですね。グループ会社で電力事業をやろうと提案したときも、それなりの反対がありましたし、動画配信サービスの「U-NEXT」も全く同じです。取引先の銀行さんを含めて、みんなからやめたほうがいいと言われて、USENから分離独立するかたちで挑戦していきました(結果的にU-NEXTはその後、東証マザーズ上場(14)、東証一部上場(15)を経てUSENと経営統合し、現在の主力事業となっている)。
悩むくらいなら挑戦せよ
私が起業したころと比べると、現在は最初から大きなビジョンや事業計画を立てて、当たり前のように資金調達をして事業を進めることができるわけですから、起業家にとってとても恵まれた環境が整備されていると思います。もし私が今、20代だったとしたら、たぶんまた同じ道を歩んだでしょう。インテリジェンスの創業当時、東証に最短で上場した会社は創業10年でした。私は「10年で上場させるぞ」「社員1000人の会社をつくるぞ」と宣言していたのですが、今だったら「3年後に上場して、10年後に時価総額1兆円の会社をつくるぞ」と掲げたはずです。
よく、「起業しようと思っているのだけれども」という相談を受けることもあるのですが、私はその度に「だったら今すぐやればいいじゃない」と話すようにしています。それは経営者だけでなく、野球選手だろうがサッカー選手だろうが、何でも同じこと。早くからやっているほうが有利に決まっているからです。挑戦するならば、一日でも早くやったほうが伸びしろは大きいし、チャンスも巡ってくるはず。迷っていることに意味はありません。U30の方々が、これから可能な限り多くの挑戦をしていくことに期待しています。
うの・やすひで◎U-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO。1963年、大阪府生まれ。88年リクルートコスモス入社、89年インテリジェンス(現パーソルキャリア)創業。98年に父・元忠が創業した大阪有線放送社(旧USEN)社長、2010年に旧U-NEXT社長、17年12月から現職。