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2024.09.20 17:45

豪5兆円企業Canvaは、なぜ社員の「ランチタイム」を大切にするのか

CanvaのHRには「Vibeチーム」と呼ばれるユニークなチームが存在し、職場体験の向上、特に社員の交流など従業員体験(EX)に力を入れる。

2016年からこの「Vibeチーム」を率いるクリス・ローは、実は企業の人事部などでの経験はなく、Canva 本社近くにあるレストランの経営者だった。店の常連客だったCanva幹部はある時、ローが店の売却を計画していることを知り、ローをCanvaにスカウトした。快適で家庭的なサービスを提供し、持続可能性や地産地消の食材にこだわり、人が集まるローのレストランがもつ「雰囲気」が、Canvaに必要だったのだ。

Canvaにとって「breaking bread」(パンを分け合うこと。仲間との食事の意味)は非常に大切で、創業時から固く守られている「the sacred lunch hour(神聖なる昼食時間)」という習慣もある。オフィスに出勤している社員は、正午からの1時間、無料の昼食に招かれる。この時間は社食に加え、屋上のテラスでも食事を提供する。参加は自由だが、リモートワーカーも含め、この1時間はできる限り皆が仕事を離れ、自分自身や家族、同僚と向き合う時間にするという原則がある。

その分、仕事では切り替える。賑やかな食事風景から離れ、オフィスフロアに移動すると一転、その静けさに驚く。コルゲートは、今度は声をひそめて話す。

社内の壁一面に、カリカチュアが並ぶコーナーがある。実は、勤続5年以上の社員を描いた似顔絵なのだという。その社員の人となり、趣味など特徴を表すニックネームも添えられており、クスッと笑ってしまう。カリカチュアは、勤続の功績を称える目的もあるが、会社にどんな人材がいるのかを他の社員にわかりやすく伝え、興味をもってもらうためでもあるとコルゲートは話す。なぜそこまで社内の交流に投資するのだろうか?

「社員はチームごとに独自のゴールを設定し、独立して動いているので、つながりをもつことは大切です。最終的には、それがビジネスのあり方、仕事の質、社員の幸せに大きく影響するからです」

事業拡大によりシドニーの本社は手狭になっており、2026年に新社屋への移転を予定している。ただし、会社のアイデンティティである創業の地、サリーヒルズへのこだわりと、これまで築いてきた地域社会とのつながりは揺るがない。移転するビルは、現在のオフィスから徒歩数分の場所にあるのだ。

新しい本社は、これからのCanvaのあり方を内外に示す存在にもなる。会社の価値観を反映し、例えば建物は既存の構造物を生かして必要な部分だけを改修する。再生可能エネルギー100%に切り替え、屋上はグリーンルーフにして、自転車通勤者用の設備を充実させる。「Canva Space」のような地域社会と社員の共創スペースも確保し、慈善活動など交流を促進するコラボレーションを、引き続き支援する。

それでも「企業文化は変わりません。10人でしていたことを、5000人になっても、規模を拡大して同じようにやるだけです」とコルゲートは強調する。

オフィスの一角に飾られているカリカチュアは、勤続社員の表彰代わりの似顔絵だ。勤続5年以上が対象で、創業者も描かれている。

オフィスの一角に飾られているカリカチュアは、勤続社員の表彰代わりの似顔絵だ。勤続5年以上が対象で、創業者も描かれている。

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文=平林純子 写真=佐々木 康

この記事は 「SPECIAL ISSUE WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE09 (発売日2024年08月29日)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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