キャリア・教育

2024.09.17 13:30

卓球金メダリストが語るブレイクスルーを起こす思考習慣:水谷 隼

優れた人を引き上げる

東京オリンピックでは、卓球競技で日本初の金メダルを取ることができました。混合ダブルスでの金メダルも、団体戦での銅メダルも、自分以外の誰かとともに勝利を目指した、いわばチーム戦です。ただし、オリンピックのように、高い目標を掲げたトップ選手同士でチームを組むときは、ストレスはほぼありません。難しいのは、目標が異なるチームを率いるときです。

チームに人が多くなればなるほど、それぞれの目標に差が出てきます。大学の部活動がまさにそうでした。私のようにオリンピックのメダルを目標にする人もいれば、卓球の推薦でいい企業に入ろうと考える人もいる。そういうときは周りのレベルに合わせるのではなく、自分が求めるレベル感を貫きます。

大事なのは底上げするのではなく、チームのなかでいちばん優秀な人をとことん引き上げること。自分の身近に「この人なら革命を起こしてくれるかもしれない」と感じる人がいたら、その人の成長に力を尽くす。その人のモチベーションに引きずられるようにして、チームはみな成長していきます。これはビジネスシーンでも同じではないでしょうか。
 
現役時代、日本の卓球、特に男子卓球をもっとメジャーにしたいと願ってプレイしてきました。18年に日本でプロアマ混合のTリーグが発足し、開幕式が両国国技館で行われたときは感無量でした。その後オリンピックで金メダルを取ることができ、「卓球の裾野を広げる」部分に関して自分のできることはもうほとんどないと思っています。
 
これからは、卓球の奥深さをわかりやすく伝える人になっていきたい。私自身も何度目かになるブレイクスルーを求められているのだと感じます。


みずたに・じゅん◎元卓球選手。オリンピックでは北京、ロンドン、リオ、東京で日本代表。東京大会では混合ダブルスで金メダル、男子団体で銅メダルを獲得。パリ大会ではテレビ東京の中継メインキャスターに就任。

文=佐藤友美 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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