経営・戦略

2024.09.26 08:15

日本郵政キャピタルが「民泊無人管理」のスタートアップに出資する理由

(左)日本郵政キャピタル シニアマネージャー 井形 晋太郎 氏(右)matsuri technologies 代表取締役 吉田 圭汰 氏

2050年に向けた拡がり

インタビュアー:2050年に向けて、matsuri technologiesの拡がりは、どういったものがありますか?
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matsuri technologies 吉田氏:日本の国土を見渡すと、宿泊施設に転用可能な建物は数多くあります。地元の名士の方が所有されている建物もあるでしょう。そういった方々にmatsuri technologiesを活用した民泊をどう知ってもらうか。課題は大きいですが、その分、拡がりは大きいです。

これもまた一例ですが、山形県の鶴岡市にある羽黒山の五重の塔は、交通のアクセスが悪く、2050年には人手不足で宿泊施設に人を泊められないかもしれません。

私は、この1000年の歴史がある荘厳な建物の魅力をもっと多くの方に感じてもらいたいと思っています。そのためには宿泊施設の充実や交通手段の拡充が不可欠です。ライドシェアの解禁と当社の宿泊施設の無人管理のテクノロジーがあれば、2050年の羽黒山には人があふれているかもしれません。
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日本全国の物件や観光資源にかかわる方に、自身の観光資源の素晴らしさと、それを伝える手段としての、テクノロジーと当社のソリューションをもっと知ってもらいたいと思います。

日本郵政キャピタル 井形氏:日本郵政グループには、24000の郵便局を含む多くの拠点があります。車両もバイクからトラックまで多く所有しています。宿泊と移動の基盤はあるわけです。今後、日本郵政グループ内のアセットの活用を考える上で、matsuri technologiesとの連携は、常にスコープに入ってくると思います。

インタビュアー:AI(人工知能)の発展とmatsuri technologiesの関係は、どうでしょうか?

matsuri technologies 吉田氏:2050年には、AIの発達で、旅行の仕方も変わると思っています。特に翻訳関連は影響が大きいと思います。すでに、海外からの旅行客の中には、現地の観光ガイドやウエブサイトではなく、日本語で書かれた観光ガイドやウエブサイトを現地の言葉に翻訳して、読んでいる人もいます。ディープな情報を吸収できることによって、より多くの訪日観光客が「本当の日本」を探しに来るでしょう。

日本郵政キャピタル 井形氏:AIや仮想空間の規模が大きくなればなるほど、相対的にリアルの価値が増大すると思っています。旅行、宿泊の体験価値は下がることはないでしょう。新産業の創造を通じて、人々の生活が豊かになる世界をつくっていきたいと思っています。

 

脚注

※1 日本政府観光局 年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移

※2 日本政府観光局 訪日外客数(2024 年 4 月推計値

※3 観光庁 宿泊旅行統計調査(2024年3月・第2次速報、2024年4月・第1次速報)

※4 令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート

※5 外務省 イタリア共和国 基礎データ

ロイター イタリア観光客、昨年は最多更新 コロナ後初めて外国人半数超え

取材後記(曽根 康司)

筆者は黎明期のアマゾン・Yahoo! JAPANといったインターネット企業での勤務を経て、印刷された文字(アトム)がネット(ビット)に代わる様や、ECによって物流が大きく変わる現場を見てきた。

元国営企業でもあり、いまは民間上場企業として変化を遂げた日本郵政グループは、まさに文字(手紙)と物流の中に存在してきた。彼らこそ、インターネットの影響を実にダイレクトに受け、変わり続けることを余儀なくされた存在である。

そして、変わるために彼らが仕掛けるオープンイノベーションの先にいるのは、スタートアップだ。150年以上の歴史を持つ日本郵政と若き企業の共創から生まれるものは何なのか。追いかけていきたい。



※本稿は 「jp-capital」の記事を再編集したものである。

文=曽根康司 再編集=石井節子

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