神戸市が高校生に広報用写真の撮影を依頼した理由

ところが、今回の神戸市との協定では、撮影料と交通費が得られるが、代わりにクライアントである神戸市の細かい注文に合わせて撮影しなければならない。

例えば、子育てをしている親子の写真を撮るときに、「お父さんと0歳児が絵本を楽しんでいる写真」というオーダーがあれば、それを忠実に撮影しなければならない。カメラを職業にしようとする学生にとって、これは間違いなく役に立つ経験になるだろう。

2年生の衣笠 諒が撮影

2年生の衣笠 諒が撮影

1992年から学校のリブランドを開始

さて、神戸市からの最初の発注は、子育てをしているインフルエンサーたちの交流会の撮影だった。この撮影に臨んだ3人の部員のうち1人、玉山優華(16歳)は次のように話す。

「同級生を撮るのは、知っている者同士なので難しくないです。でも今回は、まったく知らないお父さんお母さんや子どもたちを撮るので緊張感がありました。ただ、ステキな表情を撮れたときは、とてもうれしかったです」

2年生の玉山優華が撮影

2年生の玉山優華が撮影

どうやら狙ったとおり部員たちの実力を伸ばすのにも効果はありそうだ。

実を言うと、同校は半世紀近く前に荒れていた時代があった。その頃、都市部でそのような高校が多いなか、同校もその一つであった。だが、年月が流れ今回、取材のために同校を訪れると、生徒のほうから礼儀正しく挨拶をしてくれるのに接すると、隔世の感がある。

神戸国際大学附属高等学校は、1992年に校名を八代学院高等学校から変更して、リブランドを開始した。

まずは運動部の活動に注力すると、硬式野球部が2001年に春の選抜高等学校野球大会に初出場。これまで夏の全国高等学校野球選手権大会を含めると、甲子園には通算8回、出場している。

一方、男子ハンドボール部も2008年に全国高等学校総合体育大会(インターハイ)に初出場、2020年のコロナ禍で全国大会がなかった年を除くと、16年連続で出場を果たしており、全国レベルだ。

また5年ほど前からは文化部の活動にも力を入れている。そんな写真部の部員たちが、これから撮影する写真に、どんなメッセージが込められていくのか、とても楽しみだ。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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