さらに最近では、河野太郎デジタル相も円安によるデメリットはメリットを上回ると警告。河野大臣はブルームバーグに対し、「為替は日本にとって問題だ」とした上で、「円は安過ぎる。価値を戻す必要がある」と付け加えた。
そうは言っても、長い間、自民党は円安を支持してきた過去がある。実際、1990年代半ば以降の自民党政権が慣れ親しんだ唯一の経済政策は、間違いなく円安の支持である。
自民党が円安という支柱なしで生きていけるかどうかは未知数である。そして、植田総裁が利上げ後も姿勢を維持し、踏ん張れるかどうかもわからない。
きっと植田総裁は、2006年と2007年に2度の利上げを実施した福井俊彦元日銀総裁のことを思うことだろう。
しかし、この利上げの動きは短命に終わった。2008年までに福井元総裁の後任者は金利をゼロに戻し、量的緩和を復活させた。2013年には黒田元総裁が登場し、日銀のバランスシートを拡大し、量的緩和を急速に進めた。確かにこの10年間、日本はある程度の成長を実現したし、この金融政策が生んだ円安と過剰流動性により、株価も史上最高値をつけた。しかし、家計が得た恩恵はそうでもなかった。
四半世紀にわたる量的緩和がもたらしたのは、結局のところ先進7カ国の経済を、現代経済学が見たこともないような最悪の企業助成中毒者に変えてしまったことだけだった。今、植田総裁は「日本株式会社」を金融的な甘い蜜から引き離すための、依存症回復プログラムを考案しなければならない立場にある。しかし、彼にとって残念なことに、従うべき設計図も、参考にすべきケーススタディも、相談できる白ひげのノーベル経済学者もいない。
植田総裁は本当に、物事を自分でイチから作り上げているのだ──特に、彼のチームが現在開催中の政策決定会合の席についている間は。日銀が3つの選択肢のうちどれを選ぶかわかっていると言う人は、まともに相手にすべき輩ではない。ただ一つ確かなことは、植田総裁は、彼の同僚たちも下すのを嫌がるような決断を迫られているということなのだ。
(forbes.com原文)