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2024.07.29 10:30

歩みが遅い「産業の脱炭素化」はスタートアップのチャンスの場になる

例えば、スウェーデンのH2 Green Steelは、グリーンスチールの開発を進めており、ポルシェ、ボルボ、スカニア、メルセデス・ベンツ、BMWなどの企業と多数のオフテイク契約を結んでいる。政府や輸出信用機関(ECA)による債務保証と組み合わせることで、これらのオフテイク契約は、H2 Green Steelによる「First of a kind(FOAK)」プロジェクトの資金調達のリスクを低減している。

4つの注目スタートアップ

産業の脱炭素化における課題や機会を踏まえると、スタートアップには革新を起こし、価値を生み出す多くの機会が存在している。ここでは、産業の脱炭素化におけるさまざまな面に取り組む、注目すべきスタートアップを紹介する。

・熱エネルギー貯蔵システムを開発するMGA Thermal

熱エネルギー貯蔵システムに利用されるモジュール式のブロックと小さな金属合金粒子(MGA Thermal)

熱エネルギー貯蔵システムに利用されるモジュール式のブロックと小さな金属合金粒子(MGA Thermal)

オーストラリア・ニューカッスル大学での約10年間におよぶ研究をもとに。150°C〜650°Cまでの産業用熱を脱炭素化する熱エネルギー貯蔵システムをMGA Thermalは開発している。

このシステムは、相変化材料を使用したモジュール式のブロックで構成されており、小さな金属合金粒子が基質材料内に分散している。ブロックが加熱されると、金属合金粒子は溶けてエネルギーを蓄積し、基質材料は固体の状態を保つ。この相変化材料により、MGA Thermalのシステムは安定した温度出力を実現し、従来の熱貯蔵システムと比較してエネルギー密度を2倍から3倍に向上させることが可能となっている。

再生可能エネルギーと組み合わせることで、熱供給やコージェネレーションなどの産業プロセスに、低コストかつ低炭素の熱エネルギーを供給することができる。

・石灰石の生産でCO2排出を最大60%削減するMinus Materials

海洋微細藻類の培養タンク(Minus Materials)

海洋微細藻類の培養タンク(Minus Materials)

Minus Materialsは海洋微細藻類(coccolithophores)から炭素負荷の低い石灰石粉(炭酸カルシウム)を生産している。この石灰石は、化粧品や栄養補助食品などの消費財市場、紙やパルプの製造、ポリマー複合材料、塗料、コーティング、ドライウォール、セメントなどのインフラ材料の原料として応用できる多目的な素材だ。海洋微細藻類は太陽光、海水、CO2を取り込んで、細胞の周りに炭酸カルシウムでできた殻を作る。

セメント製造は、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の8%を占める主要な要因だ。排出量の60~70%は、石灰石をカルシウム酸化物とCO2に化学変換する過程に由来している。Minus Materialsの革新的な方法は、自然にCO2を吸収した石灰石を利用しており、セメント生産中の石灰石の化学変換に関連する排出量を最大60%削減するというものだ。同社の手法は、よりサステナブルな建設方法に向けた大きな一歩を示している。
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文=マイケル松村 編集=安井克至

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