・デジタルツインと機械学習で重工業分野でサポートするCarbon Re
英国のロンドン大学(University College London)とケンブリッジ大学のスピンアウト企業であるCarbon Reは、ソフトウェアを駆使してセメントや鉄鋼といった重工業分野での脱炭素化をサポートしている。このプラットフォームは「デジタルツイン」と機械学習を活用し、産業プロセスのエネルギー効率と炭素排出量を最適化することを目指している。
特にセメント工場などの大規模排出施設では、日々の運営の最適化が燃料コストや排出量に大きな差を生むことがある。Carbon Reのシステムは、原料の供給量やセンサーデータ、化学的サンプリングなどの工場データをもとに、各施設専用の精密なデジタルツインを構築し、リアルタイムで最適化を可能とする。同社のソフトウェアは、世界中のセメント工場で稼働しており、顧客の燃料費とCO2排出量を最大10%削減している。
・金属素材の再生でコストとCO2排出量の削減を目指すSUN METALON
Scrum Venturesの出資先であるSUN METALONは、製造工程におけるCO2排出量を大幅に削減した金属資源、グリーンメタルの活用拡大に向けた技術とソリューションを提供している。化石燃料を使用しない独自の革新的な金属加熱技術を開発し、金属の製造・リサイクルにおけるコストとCO2排出量の大幅な削減を実現している。例えば、金属の加工過程で生じるアルミニウムや鉄のスクラップは通常、価値が下がる形で再利用(ダウンサイクル)されるが、SUN METALONの技術を活用すれば、これを高品質な再利用可能資源として顧客に提供することが可能だ。同社はアルミニウム切削屑のリサイクル技術をトヨタ自動車と共同で開発しており、近く現場実装を予定している。
また、コークスを使わずに鉄鉱石を還元するグリーンスチールの製造技術についても、従来より安価で環境負荷の少ない手法の開発を手掛けている。将来的にはSUN METALONが製造するグリーンメタル資源を販売・流通することも見据えている。同社は現在、米国市場への進出を積極的に進めており、日本発のディープテック・スタートアップが世界で活躍し、産業の脱炭素化に貢献する事例となることが期待されている。
産業の脱炭素化は気候変動対策の中でも特に重要かつ困難な課題となっている。その一方で、今まで相対的に注目が低かったこともあり、これからさまざまな革新的技術を開発するスタートアップが世界の脱炭素化に大きく貢献するチャンスも存在している。
連載:SCRUM FOR THE FUTURE
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