実は多い日本企業がオーナーの会社
以前、日米関係を揶揄して「アメリカがくしゃみをすると、日本は風邪をひく」と言われた時代もあったが、ハワイ日系社会の関係者に言わせれば、現在のハワイ文化を左右するのは、日本なのだ。その理由は、日本企業がオーナーとなっているハワイの会社の多さだ。ハワイには、実は日本企業がオーナーという会社がけっこう多い。ハワイを代表する名門ホテル「ハレクラニ」は三井不動産がオーナー。三井不動産は日本の帝国ホテルの大株主としても有名だ。シェラトンワイキキ、モアナサーフライダー、ロイヤルハワイアン、シェラトンプリンセスカイウラニの各ホテルも、オーナーは日本の国際興業。
ホテルで言えば、ワイキキ内のデザインホテル「サーフジャック・ハワイ」は星野リゾートの所有、イルカの飼育で知られるカハラホテルは、ゴルフ場会員権販売で知られるリゾートトラストが経営している。
飲食店に目を向ければ、人気のステーキハウス「ウルフギャング・ステーキハウス」は実はWDIという日本の外食チェーンが経営しており、老舗の「ハイズ・ステーキハウス」は関西が本社の自動車ディーラーを中心とした企業グループが経営している。
昨年オープンした「STIX」というワイキキのフードコートは、日本のエンターテインメント企業がオーナー。パンケーキやオムレツで観光客に人気の「エッグスンシングス」もいまやオーナーは日本人だ。
閉店の危機にあった日系人経営の「與平寿司」を広島県のマツダ車ディーラーを中核とした企業グループ「ヒロマツホールディングス」が再建したのは、このコラムでも紹介した。
ワイキキ真ん中のDFS(免税店)が入るビルはつい数年前まで日本人オーナーの所有で、最近地元ファンドに売却された。ゴルフ場も、カポレイゴルフクラブ、ホアカレイカントリークラブ、プリンスゴルフクラブは日本企業の所有だ。
ハワイに来てホテルに滞在してレストランを楽しみ、ゴルフをプレー。「ああ、ハワイを堪能した」と思ったところ、利用した先が全て日本企業の経営だったということも珍しくないのである。
もちろん、これは悪いことではない。サービスなどホスピタリティーの分野では世界レベルで評価されている日本の文化がハワイの企業にも浸透するならば、それはハワイにとってもメリットになる。
しかし、今回のハワイ報知社の倒産騒動を見るにつけ、もし日本企業によってハワイ文化が侵食されるような事態になるならば、それは全力で避けてほしいと思う。
100年以上続いたハワイのメディアを守る力が日本側になかったことはつくづく残念だ。今後は、日本企業オーナーの皆さまがハワイをもっと元気にしてくれることを、ぜひ期待したい。