東京商工リサーチによると、人手不足に起因する倒産件数は、2024年1〜6月の間で145件(前年同期比116.4%)にのぼった。同社が調査を開始した2013年以降の「年間」最多倒産件数は2023年の158件だ。2024年の前半のみで、9割以上の件数に達している。
原因を細分化すると「求人難」が58件、「人件費高騰」が47件、「従業員退職」が40件だ。業種別内訳の上位3業種は、サービス業他が46件、建設業39件、運輸業29件という結果を示している。
物流業界では2024年問題の影響により、大手企業同士のM&Aも着々と進んでおり、中小企業はますます厳しい立場に置かれるだろう。
SNSの活用により、約50人の従業員のうち1/3が20〜30代に
一方、中小企業の中には効果的な採用戦略を実践している運送会社もある。その一例が、石川県に本社を置く野々市運輸機工だ。同社は、クレーンのついたユニック車と呼ばれる車両を保有している。必要な免許が多いため、採用のハードルが高い。
代表取締役社長の吉田氏は、採用に力を入れるために地域の就職イベントへの出展を検討した。その際、大手企業の出展ブースばかりに人が集まる光景を目の当たりにして「ここは戦う土俵ではない」と感じたそうだ。
そこで2022年9月からYoutubeやTikTokなどのSNSにショート動画の投稿を開始した。吉田氏は当時の様子をこう話す。
「開始当初は私と広報部長の二人で、こそこそ動画撮影をしていました。認知を広めたいのに、社内にバレたくないという相反する思いやアンチコメントへの葛藤もあり、『一体自分は何をしているんだろう』と感じていた時期もありました」
そうした不安も束の間。約半年後には「動画を見た」という入社希望者が現れた。従業員規模約50人の同社だが、そこから2年間で9人の採用が決まった。
物流業界の広報にSNSが活用されている例では、社長や、インフルエンサードライバーが出演する動画がこれまでも存在している。一方で、同社は社長である吉田氏をはじめ、多くの従業員が出演しており、社内の雰囲気の良さを感じられる特徴がある。吉田氏は「多くの社員に出演してもらうことを一つのKPIにしている」と明かす。
ショート動画は、「踊ってみた」や「あるある」系のトレンドを意識したコンテンツから、仕事の紹介まで多岐にわたる。若手人材の目につきやすい動画コンテンツがパンフレットの役割を果たし、未経験業界に踏み込むための最後のひと押しをしている。