食&酒

2024.07.22 15:30

日本のトップソムリエに聞く「粋なワインの選び方」

予算のなかで最大限に楽しむには

特にボトルを頼む場合、良いものは天井知らずで、どのあたりが妥当か迷われると思います。一つの目安として、コース料金の半分+αと考えるとよいでしょう。ワインが好きなゲストをもてなす場合は、ワインにかける予算を上げて料理をライトにするなど、割合を調整するのもおすすめです。予算感を知られたくない席であれば、電話や早めの来店時に予めお伝えいただくとスマートです。あるいは、ワインリストを開きながらゲストに見えないように金額を指差して、「今日の料理に合わせて赤ワインを1本……」のようにお知らせください。

3万円以上のワインになると、格や希少性の高いプレミアムレンジとなり選択肢も広がります。こういうときこそ、ソムリエに相談すると、リストのなかでもお値打ちなもの、リストに載っていない隠し在庫が出てくるかもしれません。いずれにしても大事なのは、ホストとソムリエの信頼関係。正直にお伝えください。
 
近年は「ペアリング」という便利な選択肢も主流になっています。これはソムリエがコースに合わせて数種類のワインを少しずつグラスで提供するというもので、料理の味を増幅させるマリアージュを楽しめます。また最近は、以前飲んで好みだったワインの写真をスマホでソムリエに見せて、同じようなワインをオーダーされる方も増えてきています。これもひとつのコミュニケーションのかたちだと思います。

屋外で「ペットナット」をカジュアルに

ソムリエは常に造り手に対して尊敬の念を忘れてはならず、すべてのワインに平等であるべきなので、私の自流として「好きなワインをつくらない、人にお伝えしない」ようにしています。ソムリエとして自分の好みを出してしまうと、ワインセレクションに偏りが出たり、ゲストの好みに応えるという軸が揺らいでしまう可能性もあります。とはいうものの、仕事を離れた個人としての好みはあり、それはワインを飲むシチュエーションによって変わります。屋内でワインを楽しむのであれば、やはりどんな料理に合わせるかの相性が優先されます。ですが、テラスや屋外で楽しむなら比較的カジュアルに楽しめるワインがいいですね。最近は「ペットナット」というスパークリング・ワインを好んで飲んでいます。コルクではなく王冠で栓をしているので開栓が楽で、ほかのスパークリングと比較して炭酸の気圧も低いので気負わず親しみやすい。特にこれからの時期におすすめです。


野坂昭彦◎マンダリン オリエンタル 東京 ディレクター オブ ワイン。ソムリエとして長年経験を積み、数々のコンクールで優秀な成績を修める。直近では2023年全日本最優秀ソムリエコンクール優勝。国際資格 Advanced Sommelier Certificateを有する。

文=野坂昭彦 編集=鈴木奈央

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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