経営・戦略

2024.08.02 11:15

120点の提案書じゃ勝てない 3大鉄則は「話さない」「質疑応答」「修正力」

Getty Images

スタートアップを中心にビジネスのトレンドを、メールで隔週お届けしている「Forbes JAPAN Newsletter」。本連載では、その内容をピックアップして紹介します。

今回は、スタートアップのCxOを歴任した植野大輔さんによる「大胆不敵なキャリア戦略」コーナーで全8回にわたって配信した「勝てる提案書」を掲載します。

前編:斬新さは不要 5000件の提案書を見たトップコンサルの「勝つ提案」


鉄則1:きれいなプレゼンでは負ける! 50%以上は顧客に喋らせる

前編では、クライアントの真の悩みを深く理解し、寄り添う姿勢が、勝てる提案書の秘訣であることを説明しました。

そのうえで、PROFFIT社の関根有社長によると、実は提案の勝敗は、提案書の中身以上に、提案の持って行き方(デリバリー)に左右されるとのこと。

「以前もお伝えしたように、120点満点のハイクオリティな提案書を作ったとしても、実際の提案の仕方がイマイチで、あっけなく敗退してしまうケースは少なくありません。逆に提案書がそこそこの出来でも、デリバリーで大逆転できる可能性があるのです」

読者の皆さんも、さまざまな提案をビジネスのなかでされてきたと思いますが、では、「刺さる提案の持って行き方(デリバリー)」の鉄則は何なのか?

「刺さる提案のデリバリーのポイントはいくつかあります。まず多くの方が勘違いしがちですが、きれいなプレゼンテーションが必要と思っていませんか?」

そりゃ、力作の提案書をお客様の前で完璧に説明し切って、唸らせたくなるものですよね。しかし、ナント関根さんによると、これが大きな勘違いのもととのこと。

「ぜひ意識してほしいことがあって、それは、お客様が話す時間を50%以上にすることです。実は、調査をしたところ、お客様側がたくさん話した場合の方が、提案の勝率がはるかに高くなるのです」

提案書でもクライアントの悩みに徹底的に寄り添うことが重要と前回お伝えしましたが、それはデリバリーでも同じ。クライアントに、悩みを語ってもらいながら、

「この人たちは、悩みをわかってくれる」
→「やるべきことが見えてきた」
→「やってみたい、これはやろう」

と気持ちの変化を作っていくことが、デリバリーの鉄則なのです。

「お客様に『提案、どうでしたか?』と所感をお聞きすると、ずっとコンサルの方が喋りまくっていた……(苦笑)ということが結構あります。こういうケースに限って、提案したコンサル側に聞くと『非常に刺さってました!』と手応えを感じていたりするので、この認識ギャップには留意してほしいですね」

ふと自分を省みると、私も思い当たる節があって怖くなります……。自分より相手がたくさん喋るデリバリー、ぜひ意識をしたいですね。

鉄則2:顧客との質疑応答が、本当の勝負どころ

刺さる提案デリバリーの鉄則をさらに知りたくなりますが、次なる鉄則が「質疑応答で専門性アピールする」こと。

「実は、提案書のわかりやすさより、質疑応答で評価の差が大きくつくのです」と関根さんは言います。

提案書の説明、プレゼンは、あくまでコンサル側主導ですが、クライアント側が主導権を握る質疑応答によって、「コンサルなんて敷居が高いと思っていたけど、親身に答えてくれる」「さすが、知見が豊富そうだ」と、クライアントは、コンサルを起用する価値体験をできるわけです。

「質疑応答で、クライアントの質問に単に回答するだけでなく、ここで+αの情報をしっかり加えていけるかを意識して欲しいです」

例えば、「今回のケースで、成功事例はありますか?」とお客様から聞かれるケース。皆さんならどう答えますか?

関根さんによると、「ここで企業名や事例を回答するだけだと、合格最低点です」と言うから手厳しい……。

「重要なのは、そこに+αできるかどうか。たとえば複数の事例を提示しながら『御社はこの事例が一番、参考になります』とか、『成功の裏には、こんな苦労があったが、こう乗り越えました』という秘話などを付け加えていくことで、強烈な専門性のアピールになるのです」

プロジェクトは複雑化し、単なる問題解決技法やロジカルシンキングよりも、“専門性”が大きく重視される時代です。過去のプロジェクト実績や、専門性あるメンバーの有無はもちろん、プロジェクト当事者だからこそ知り得る裏情報は、極めて大きな評価項目です。そのアピールの場として、質疑応答をただの受け答えで終わらせず、+αの知見、専門性を色濃く示していきましょう。
次ページ > 大逆転を起こす、修正力とスピード

文=植野大輔

ForbesBrandVoice

人気記事