画像の出所
「小さな穴」と題されたこの画像は、2006年から18年にわたり火星を周回探査しているNASAの探査機マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)が2022年8月15日に撮影したもの。今年5月21日に最初にインターネット上で共有された。画像は米アリゾナ大学が共有したもので、MROに搭載の高解像度カメラHiRISEで撮影した画像を紹介する同大のウェブサイトの今日の1枚(HiPOD)のページに掲載された。HiRISEは、高解像度撮像科学実験装置(High Resolution Imaging Science Experiment)の頭文字を取った名称だ。
何が写っているか
この画像に写っているのは、火星の赤道に近いタルシス地域にあるアルシア山の山腹に開いた縦穴だ。アルシア山は、同地域にある死火山となっている3つの巨大な楯状火山のうちの1つ。NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、アルシア山は直径が約450km、標高約20kmで、頂上のカルデラの幅が約120kmにおよぶ。カルデラのみと比較しても、地球にある多くの火山より大きい。画像の説明文によると、地面の穴は、地質学的に最近の地殻変動や火山活動を反映している可能性がある。また、穴が洞窟に続く入口である場合には、今後の無人探査の対象になる可能性があることが示唆されている。
火星の穴に心躍る理由
月や火星の表層下の(特に楯状火山の周辺によく見られる)洞窟や溶岩洞は、宇宙飛行士による調査の候補地となっている。溶岩洞は、地下の溶岩流の流路が空になって形成された。天文雑誌Astronomyによると、このような地面の割れ目を利用すれば、有害な放射線、極端な温度、微小隕石などから宇宙飛行士を保護することができるだろう。JPLは、生命の痕跡や将来の居住地候補を見つけるために、地球外の洞窟や溶岩洞を探査する方法に関する研究をすでに実施している。